パート労働研究会はじまる

厚生労働省に「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」が設置され、昨日第1回会合が開催されたそうです。座長は学習院大学今野浩一郎先生です。
当日資料をみると、設立の趣旨は

…(引用者注:改正パート法)附則第7条において、「政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律による改正後の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、当該規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされている。
 現在、改正パートタイム労働法の施行後3年目を迎えていること等から、この間の施行状況を含め、国内におけるパートタイム労働の実態を把握するとともに課題を整理しつつ、今後のパートタイム労働対策について検討を行う…
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000011q6m-att/2r98520000011wiu.pdf

ということで、法改正時に施行後3年のフォローが予定されていたから…ということのようです。
検討事項については、資料9の「研究会で議論していただく論点(案)」には「1 通常の労働者との間の待遇の異同」「2 通常の労働者への転換の推進」「3 待遇に関する納得性の向上」「4 パートタイム労働法の実効性の確保」「5 その他」と5つ上げられていて、さすがにこれだけでは具体的なイメージがわきにくいわけではありますが、いずれにしてもパートタイム労働者の雇用の安定や労働条件の水準を改善したいとの意図はあるのでしょう。
スケジュールをみると「夏頃を目途に報告書の取りまとめ」とありますが、これは有期労働契約について議論している労働条件分科会の中間取りまとめと時期的に重なっています。有期労働契約の重要な検討課題として「多様な正社員」があるわけですが、案外、それと同期して、パートタイム労働における「短時間正社員」の普及を訴えようという考えがあるのかもしれません。
それはそれとして、今回の資料の中で興味深いのが資料5「パートタイム労働法の施行状況」にある「パートタイム労働関係相談件数の推移」で、法改正にともなって平成19年度、20年度に大幅に増加しているのですが、労働者の相談が(H18→H19→H20)454件→1,058件→2,811件という推移なのに対し、事業主からの相談は446件→9,143件→8,435件と激増しています。これはおそらく、改正パート法の規定にわかりにくい部分・不透明な部分があり、たとえば、通常の労働者と「同視すべき者」「職務と人材活用の仕組みが同じ者」「職務が同じ者」などについて異なる取り扱いを求めていて、いったいわが社のこのパート、あのパートはどれに該当するのか、これにより取り扱いの変更が必要となるのか、といった疑問が事業主に多々発生したという事情によるのでしょう。そして、法改正内容が周知されるに従ってパート労働者の側に「自分の取り扱いはおかしいのではないか?」ということで労働者の相談が増えたのだろうと想像されるわけです。ちなみに平成21年度には事業主の相談は激減、労働者の相談も大幅減となっていますので、このあたりでだいぶ落ち着いてきたといえるのかもしれません(それでも、改正前に較べればかなり多いのではありますが)。
ということは、前回のパート法改正は、紛争を増やしたというよりは人事管理の高度化につながったという評価も不可能ではないのかもしれません。だとしたら、これは前回改正の内容が実態に応じて適切なものだったことの傍証ともいえそうです。
であれば、いったい今回なにを見直すのかなあという印象もかなりあるわけではありますが(いやもちろん待遇の改善をはかることは大切ですが、それは現行法の中でも取り組むことは可能なわけで)、まあそこは今後の議論に注目です。