全国教研受け入れはホテルの社会的責任か?

このところ連合が事務局長談話を連発していますのでいくつかご紹介。まずは先週金曜日(12月10日)に発表された「プリンスホテル問題にかかる東京高裁判決確定についての談話」です。

 12月10日、2008年2月に予定していた日教組の第57次教育研究全国集会(以下、全国教研集会)の全体集会中止をめぐり損害賠償などを求めた訴訟が、11月25日の東京高裁判決に対する上告期限終了をもって、判決が確定した。昨年7月の東京地裁の判決に引き続いて日教組側の主張がほぼ認められ、訴訟が終結したことは、憲法で保障された集会・結社の自由、労働運動の権利が守られたものとして極めて妥当であり、当然の帰結であると受け止める。構成組織、地方連合会、関係団体のこれまでのご理解ご協力に厚く感謝する。

 プリンスホテルには、この結果を真摯に受け止め、集会・結社の自由など基本的人権を尊重し、労働運動、労働組合の意義を理解し、社会的責任を果たす健全な企業に脱皮していくことを強く期待する。
 今回の訴訟終結をもって、連合としての本件にかかるすべての取り組みを終了する。連合は、今後とも健全な労働運動を阻むいかなる違反行為、いかなる妨害も許すことなく、断固とした姿勢を堅持し、健全な民主主義の発展に取り組んでいく。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/danwa/2010/20101210_1291962428.html

これについては事件当時も少し書きましたが、一方的に契約を破棄*1し、裁判所の命令にもかかわらず使用させなかったというプリンスホテルの対応はまことに遺憾であると私も思います。ただまあ連合が、いかに右翼の街宣車が集まろうが「集会・結社の自由など基本的人権を尊重し、労働運動、労働組合の意義を理解し」会場を提供するのがホテルの「社会的責任」だ、とまで言うのはどんなものかなあと思います。
つまり問題は「いったん契約したのに一方的に破棄して会場を使用させなかった」ことであり(訴状もそうなってるはず…見てないけど)、利用の申し込みがあったときにハナから契約せずに断っておけば*2少なくとも裁判所に行くような問題にはならなかったはずです。
それに対し、連合のこの談話を読むと、いかに右翼が来て騒ごうがホテルは労組の集会に会場を提供すべきだ、それが社会的責任であり健全な企業であり、したがって契約を断ってはならない、という調子になっていますが、しかしホテルにそこまで求めるのは酷ではないでしょうか。もちろん集会の自由や結社の自由は重要な基本的人権であり、とりわけ労働運動にとっては大切な価値観でしょうが、しかしその射程は市民会館などの公的施設などにとどまり、営利事業であるホテルにまで及ぶものではないと考えるべきでしょう。
それでもなお連合がそれをホテルの社会的責任でありそれが健全な企業であると主張したいのであれば、仮に連合傘下労組の組合員がホテルに宿泊し、その際たまさか右翼の街宣車がホテルに対する「抗議」を行っていてその喧騒のために寛げなかったとしても、それは受忍しなければならない、苦情を述べたりネット上の口コミで「やかましくて眠れなかった」などと書いてはならない、ということでもあるでしょう。まあ街宣車などを使って声高に宣伝すというのは労組の得意技でもあるのでこらこらこら。
また、プリンスホテルの対応も遺憾なものではありましたが、しかしやはり諸悪の根源は会場近辺に押し寄せて騒ぐ右翼なのであって、連合が「健全な労働運動を阻むいかなる違反行為、いかなる妨害も許すことなく、断固とした姿勢を堅持」するというのであれば、ホテルを非難するだけではなく、全国教研の会場に出向いて右翼と対峙すべきではないでしょうか。右翼は日教組・全国教研を「健全な労働運動」ではないと考えて騒いでいるのでしょうから、なおさらだと思います。いやまあ貴様が知らないだけですでにやってますよという話なのかもしれませんが。
なお、以下はまったくの推測になりますが、仮にプリンスホテルが全国教研を受け入れ、結果的に周辺で3日間ワーワー騒がれたとしても、宿泊客や近隣の怒りは主に右翼に向けられ、次いで十分な取り締まりを行わない(と宿泊客などが考える)警察に向けられ、ホテルへの怒りはさほどでもなかったのではないか、ホテルの損失は恐れるほど大きくなかったのではないかとも思われるわけで、そう考えるとなおさらプリンスホテルの対応は遺憾に思えるわけですが、いややはりこうなるとわかっていて受け入れた(と宿泊客などが考える)ホテルにもかなりの怒りが向かうでしょうかね。ただ、それもあって、実は問題は街宣車ではなく、背後に身体的暴力をともなう圧力があった…という推測も当時はまことしやかに言われていたように記憶します(ウラを取っていないので自信なし)。となると、訴訟になって負けることを覚悟で(日教組という組織の性格を考えれば訴訟になることはまず確実でしょうし)、さらに負けても使用させない前提で契約破棄した可能性もありそうです。繰り返しになりますが遺憾な対応ではありますが、しかしどうしても全国教研に使わせたくないのであれば作戦としては「あり」だったのかなという気もします。その結果当然に今回確定した判決のように最終的には損害賠償という話になるわけで、まあ手前のうかつさをカネで解決したという話なのかもしれません。もっとも、なにせ裁判所の命令を無視しているわけですから損害賠償訴訟でも当然負けるし判決内容も厳しくなることは目に見えている*3わけで、なぜ控訴したのかというのが疑問ではあるのですが。

*1:しかも、これだけの規模の会場の確保はそれほど容易ではないところ、8ヶ月前に行われた予約を3か月前という時期になって破棄し、かつ代替施設の提示もないのですからタチがよくありません。まあ手前たちが破棄するくらいですから代替施設と言っても(少なくとも都心では)無理な注文というものでしょうが。

*2:そもそも全国教研は毎年開かれていて地方開催であっても街宣車が多数出動しており、それを東京の都心で開催したらどうなるかは普通想像がつくわけで、それにもかかわらず契約してしまって後で困ったというのは業者としてはいかにもお粗末だなあと思うわけですが。

*3:実際この年の全国教研は中止になってしまいましたから被害は甚大であり、数億円という高額賠償の判決だったと記憶します。