日航、整理解雇を視野に

本日の日経から。日航の希望退職が計画に届かず、ついに整理解雇に向けての最終調整に入ったそうです。

 会社更生手続き中の日本航空が9日、整理解雇を実施する方向で最終調整に入った。日航パイロットと客室乗務員を対象に同日、希望退職の最終募集を締め切ったが、270人の削減目標に対して100人以上が不足していた。これを受けて週内にも正式決定する見通しだが、労組側の反発は必至だ。
 整理解雇は、経営難に陥った企業が従業員との労働契約を解除する措置。実施するためには「人員削減が必要か」「回避する努力はしたか」など4つの要件を満たす必要がある。
 希望退職の最終募集の削減目標はパイロットが130人、客室乗務員が140人。これに対し、パイロットが100人程度、客室乗務員が数十人不足しているとみられる。
 日航東京地裁に提出した更生計画案の中で、グループ全体で約1万6000人を削減する方針を決定。このうち本体では1500人を削減する目標を掲げ、9月3日から希望退職を募集した。関係者によると10月26日までに1520人の応募があったが、パイロットと客室乗務員が目標に足りていないとして最終募集を実施。26日以降は客室乗務員の対象年齢を引き下げるなどして目標数の確保を目指してきた。
 日航と管財人である企業再生支援機構はこれまで「未達の場合は整理解雇を覚悟する」(支援機構の瀬戸英雄・企業再生支援委員長)との姿勢を示してきた。日航は今後、労使協議などで対応を慎重に検討するが、整理解雇は避けられない見通しだ。
http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C93819696E2EBE29AE28DE2EBE3E3E0E2E3E28698E2E2E2E2;bm=96958A9C93819580E2EBE2E29D8DE2EBE3E3E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2

いま簡単に調べただけでははっきりした情報が見当たらなかったのですが、うろ覚えの記憶ではたしか日航の希望退職の割増退職金は6か月という報道があり、少ないなあと感じた覚えがあります。元が高いので6か月でもまとまった金額にはなるのでしょうが、かつての電機各社の希望退職では36ヶ月とか48ヶ月とかいう数字でしたから、ずいぶん少ない印象です。まあ、日航の場合はすでに会社更生法が適用されているわけで、当時の電機各社に較べても格段に状況は深刻ですし、あまりに高額な割増退職金は世論の反発を招くとの配慮もあったのでしょうか。
それにもかかわらず、途中経過では予定を上回る募集があり、運行のために退職時期の延期を求めるという状況もあって、これも少し意外というか、再建を疑問視する人が多いのかなあなどと思っていたわけですが、最終的には必ずしも十分でない結果に終わったようです。
整理解雇の4要件(要素)にあてはめて考えると、経営上の高度の必要性はまず問題ないと思われ、ここまで希望退職をやっているところをみれば回避措置も問題ないところまでやられているものと推測されます。人選の合理性についてはまだわかりません。労組との協議などの手続については、労組は当然反発するでしょうから、ここは時間をかけて協議の実績をつくるしかないでしょう。整理解雇である以上は割増退職金などの優遇措置はないのが筋であり、そうしなければ希望退職に応じた人に対して義理を欠くことにもなりますが、しかし協議の過程ではまったくなにもなしではなく、多少の(希望退職よりは低い水準の)金銭は出すということになるのかもしれません。労組の側も、法廷闘争を覚悟して絶対反対のまま整理解雇に踏み切らせるという作戦に出る可能性がかなりありそうに思えます。争いになれば、おそらくは人選の合理性のところが最大の争点になるでしょうから、日航としてもここは相当慎重に、合理性に疑いのない人選基準をとるのではないでしょうか。となると、裁判所は解雇有効と判断する可能性が高いものと思われるわけですが、どんなものなのでしょうか。
いずれにしても、「日本では整理解雇は不可能」とか言っている人たちには、この現実をよく見てほしいものです。まあこれは余談ですが。