労働契約法はどこへ行く その3

解雇の金銭解決は、またしても先送りになってしまうようです。
先般の労基法改正の際に導入される予定で、審議会の建議にまでなったものが結局法制化されず、今回こそはというところではなかったかと思うのですが…。

(3) 解雇に関する労働関係紛争の解決方法
  労働審判制度の調停、個別労働関係紛争制度のあっせん等の紛争解決手段の状況も踏まえつつ、解雇の金銭的解決の仕組みに関し、さらに労使が納得できる解決方法を設けることとしてはどうか。

「労使が納得できる」というところまできましたか。これは要するに、労働審判制度の調停もあることだし、この際金銭解決は急がなくても…という意味なのでしょう。
ただ、日経新聞には「2年分を下限」というアドバルーンが上がっていましたので、まだ可能性は残されているのかもしれません。

 現行制度でも紛争当事者が合意すれば、和解金の支払いでの解決は可能。ただ和解金は月収の数カ月分から年収の5年分など大きなばらつきがあり、実態は不透明だ。
 厚労省は企業が解雇紛争の解決にかかる費用を予測できるよう補償額に基準を設ける必要があると判断。下限を年収の2年分とすれば、解雇された社員が職業訓練や就職活動に必要な時間を確保でき、納得しやすいとみている。労働組合の代表者らは解雇の乱発を招くとして警戒している。
(平成18年11月18日付日本経済新聞朝刊から)

年収の2年分ということは、賞与や時間外手当なども入れれば月例賃金の36ヶ月分くらいにはなるでしょうか。電機各社が希望退職をやったときに、労組が割増退職金の目途として「36ヶ月」を意識していたという記憶があり(自信なし)、そのあたりの相場観を参考にしているのでしょうか。これにバックペイが加わればけっこうな額になるので、労組も案外呑めるかもしれません。経営サイドとしても、違法解雇に対する解決金という趣旨である以上あまり低い水準は主張しにくいでしょうし…。いずれにしても、バックペイまでふくめてなんらか形で過失相殺的な減額ができるようにしないと、実務の現場では納得性の低い制度になりそうです。技術的に難しいのかもしれませんが。