「今後の高年齢者雇用に関する研究会」スタート

先週金曜日、厚生労働省の「今後の高年齢者雇用に関する研究会」の初回会合が開催されました。雇用戦略対話の政労使合意に「公的年金支給開始年齢(報酬比例部分)の65歳への引上げが開始される平成25年度に向けて、65歳まで希望者全員の雇用が確保されるよう、施策の在り方について検討を行う。」とありますので、その「検討」がスタートしたということのようです。
厚労省のウェブサイトに設置要綱が掲載されています(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000w15e-att/2r9852000000w18m.pdf)。

1.目的
急速に少子高齢化が進展し、公的年金支給開始年齢(報酬比例部分)の65歳への引上げが開始される平成25年度を目前に控え、意欲と能力のある高年齢者が、長年培った知識や経験を活かして働くことができ、生活の安定を図ることができる社会を実現する必要がある。
このため、平成16年の法改正の施行状況も踏まえ、今後の高年齢者の雇用・就業機会の確保のための総合的な対策を検討することを目的として、学識経験者の参集を求め、「今後の高年齢者雇用に関する研究会」を開催する。
2.検討事項
研究会においては次に掲げる事項を中心として調査・検討を行う。
(1) 希望者全員の65歳までの雇用確保策
(2) 年齢に関わりなく働ける環境の整備

事務局が作成した「議事のためのメモ」も公開されており(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000w15e-att/2r9852000000w19d.pdf)、今後これらの項目が検討されるのでしょう。

<検討すべきポイント(案)>
○希望者全員の65歳までの雇用確保措置の在り方
・定年制
・継続雇用制度
・高年齢者雇用確保措置の実効性確保のための方策
○年齢に関わりなく働ける環境の整備
・年齢差別の禁止
・高年齢者の雇用促進策
・多様な就業機会の確保策
・70歳まで働ける環境の整備策

個別の論点については議論の進行を見ながらここでも追い追いコメントしていきたいと思いますが、今回いちいち目的や検討事項を引用したのは、参集者名簿(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000w15e-att/2r9852000000w16v.pdf)をみて微かに気になることがあったからです。

岩村正彦 東京大学法学部教授
小畑史子 京都大学大学院地球環境学堂准教授
権丈英子 亜細亜大学経済学部准教授
駒村康平 慶應義塾大学経済学部教授
佐藤博樹 東京大学社会科学研究所教授
清家篤 慶應義塾
藤村博之 法政大学キャリアセンター長

もちろん業績も見識もすばらしい当代一流の研究者揃いですし、清家先生の座長も衆目が一致するところでしょうが、何を気にしているかというと権丈先生、駒村先生と社会保障の専門家が2人も参加しているところです。もちろんお2人とも労働問題への造詣も深いですし、高齢者雇用政策と社会保障とは密接に関連するわけですが、しかしこの手厚い布陣を見ると背後に年金支給開始年齢をさらに引き上げたいという財政的要請が見え隠れするような気もするわけで、まあ心配しすぎなのだろうとは思うわけですが…。本年度末にはとりまとめが行われるということなので、経過を注目したいと思います。