日航ではなく全日空

火曜日の朝刊から。経営再建中の日航ではなく、比較的経営が堅調な全日空が労働時間を延長するそうです。

 全日本空輸は4月から社員の基本労働時間を週37時間から40時間に延ばす方針を決め、労働組合と交渉に入った。管理職を含む約1万4000人が対象。2010年度の成田空港と羽田空港の拡張で、業務量の拡大が予想される。労働時間延長で人員増を避けるのが狙い。旅客需要の冷え込みで業績は低迷しており、人件費抑制に力を入れる。
 同社の基本労働時間は1975年から週37時間で、今回が35年ぶりの改定。延長は実質的に初めてとなる。
 残業代の削減につながるため、労組の反発は必至とみられる。経営側は「公的資金の注入で財務が改善する日本航空と競争するためには社員の協力が必要」…として理解を求める。
(平成22年2月9日付日本経済新聞朝刊から)

週3時間分の賃金をどうするのかが興味深いところですが、「残業代の削減につながる」ということですから、「37時間+残業3時間」分の賃金は保証されないのでしょう。「37時間+所定3時間」分(これだと所定0,75時間分の減額という計算になります)なのか、あるいは37時間分で賃金は変更せずに3時間所定労働時間を延ばすのか、「人員増を避けるのが狙い」ということですので、おそらく前者ではないと思いますが…。
もっとも、人員増を避けるとは言っても、平均週3時間も残業をしない、週40時間未満しか就労しない人が週40時間働くようになる、それだけの分しか効果はないわけですから、効果はかなり限られているようにも思われます。ごく大雑把に、残業が週平均3時間以下の人が全体の20%いて、その人たちの平均残業時間が週1.5時間、全体の平均残業時間が週5時間だとすれば、単純計算では
[(3-1.5)*0.2]/(37+5)*100≒0.714
となります。これが妥当かどうか、はなはだ危なっかしいのではありますが、一応この前提では約0.7%の人員抑制効果があることになります。対象人員が14,000人なので、約100人。うーん、けっこう大きいという見方もできるかもしれません。
いずれにしても、日航公的支援による再建で身軽になり、それが競争相手にとって脅威となるというのはいささかフェアでない感もなくはありません。まあ、競争相手もそれに対抗するために合理化を進めるべきだというのも正論ではあるでしょうが、適切なバランス感覚というものもあるような気がします。