悪化する欧州の雇用失業情勢

一昨日のエントリとの関連で、きのうの日経新聞から。

 欧州経済が雇用収縮の局面に入っている。4月の欧州連合(EU)加盟27カ国の失業者数は前年同月比で約3割増えた。失業率も10%の大台が視野に入る。期間工契約社員など「有期雇用」が急減し、ワークシェアリング(仕事の分かち合い)を進める正社員の雇用にも陰りがみられる。雇用悪化は個人消費を下押しする公算が大きく、欧州景気の先行きに影を落としている。
 EU統計局によると、4月のEU加盟国の失業者数は約2082万人。失業率も8・6%と3年3カ月ぶりの水準になった。ユーロ圏16カ国ベースの失業率は9・2%まで上昇。2009年1〜3月期に雇用者数(経営者、従業員を含む)が現行形式でさかのぼれる1996年以降で初めて前年同期比で減少に転じるなど、雇用情勢は今年に入ってから冷え込みが目立つ。
 欧州委員会は10年にかけて失業率が10%台に上昇し、09〜10年の2年間で850万人の雇用が減ると推計している。足元ではシナリオ通りに雇用悪化のペースが加速しており、家計の可処分所得の減少を通じ個人消費の先行きに不安を残す。
 雇用削減の主な対象は有期雇用だ。期間の定めのない正社員と異なり、あらかじめ働く期間を企業との契約で定めている期間工契約社員などを指す。欧州域内で約2600万人いるが、昨年後半から急減している。
 典型例はスペイン。建設業やサービス業で外国人労働者や移民を積極的に受け入れてきたが、こうした人々は住宅バブルの崩壊で真っ先に人員削減の対象となった。4月のスペインの失業率は18・1%の高水準で推移している。
 ドイツやフランスなどでは一時帰休や時短などによる緊急避難型ワークシェアリングを導入している。契約社員以外はこうした企業内の安全網の恩恵を受けたが、今後はパート社員を含む「期間の定めのない社員」に雇用悪化が波及するのは避けられそうにない。
 「同じ労働であれば同じ時間当たり賃金」という原則が浸透し、多様なワークシェアリングを進めるオランダ。今のところEU内で最も失業率は低いものの、4月は3・0%とじわじわと上がってきた。
 企業経営者の雇用見通しが改善に向かうなど好材料も一部にあるとはいえ、企業の求人率は過去最低水準。雇用不安で個人消費が鈍化すれば需要低迷を招き、雇用の悪化がさらに進むという悪循環に陥りかねない。
(平成21年6月25日付日本経済新聞朝刊から)

失業率が高いことについては、失業者に対する公的支援が充実しているから当面は社会的に大きな問題にはならないということかもしれませんが、それにしても起こっていることはわが国とよく似ているように思われます。ただ、欧州では有期雇用が日本より制約されていますので、その割合が低いという違いはありそうです。こういう計算ができるのかどうかわかりませんが、記事を読む限りでは、失業者2,082万人で失業率8.6%なら、有期雇用2,600万人は10.7%相当ということになるでしょう。もっとも、これは「昨年後半から急減している」ということですので、あるいは急減する以前にはもっといたのかもしれません。このあたりはこの記事だけではわかりません。とりあえず「パート社員を含む「期間の定めのない社員」」という記述がありますので、日本の非正規労働比率とは単純には比較できそうではなさそうですが…。
ドイツでは、今回の経済危機にあたって操業短縮制度(日本の雇用調整助成金制度のモデルといわれています)が大幅に拡充され、正規・非正規ともに失業を防ごうとしたとして喧伝されたわけですが(これは日本でも似たようなものですが)、現実にはやはり有期雇用の削減が進んでいるのが実態のようです。