さて、古賀氏は最後にこう述べています。
「企業が株主価値を上げる経営を目指すことは否定しない。だが配当のみを増やす経営でいいのか。昔は株主、従業員、取引先で付加価値を配分していた。日本の財産は人だ。労働の価値観を見直す時期に来ている」
「株主、従業員、取引先で付加価値を配分」というのは今も昔も同じで、その比率の問題だと思いますが、昔は株主の比率が低すぎた、ということはおおむね一般的な理解と言っていいでしょう。それではどのくらいの比率が適当なのか、というのはなかなか難しく、ひとつのパイを分け合うわけですから当然利害の対立もあります。1990年代以降の日本では、株主の比率をもっと高める必要があるだろうということで、制度や考え方などが見直されてきました。もし連合が株主の配分が行き過ぎていると考えているのであれば(実際、減益、極端な場合は赤字で雇用調整をしているときに配当を増額するというのは、私も行き過ぎだと思います)、考え方=労働の価値観を見直すだけではなく、制度も少し揺り戻す必要があるでしょう。具体的には株主の権利の制約ということになると思います。これこそ、連合が制度・政策課題、政治への取り組みを通じて実現すべきことです。「企業が株主価値を上げる経営を目指すことは否定しない」などと、企業や経営者の方を向いて言っているだけでは、意味はないとは言わないまでも、その目的は半分も達成できないでしょう。目先の派遣労働の禁止などよりはるかに重要な課題ではないかと思いますので、連合の奮闘をおおいに期待したいものです。