登録派遣禁止は派遣労働者のためなのか?

 ――舛添要一厚生労働相は製造業派遣の禁止を唱えている。
 「連合は雇用の原則は直接雇用だと主張している。禁止が行き過ぎとは思わない。八五年の労働者派遣法ができる前の状態に戻すべきだ。一足飛びにはいかないからまず製造業に限らず一般業務の登録型派遣を禁止すべきだ。今働いている四十六万人の職がなくなるという議論があるが、直接雇用に切り替えればいい」
 ――派遣社員の段階的な開放を認めた九〇年代後半の労働法の規制緩和には労働側も賛成した部分もある。
 「当時は山一証券破綻など雇用環境が極めて悪かった。企業は非正規労働者という調整弁をつくりたかった。労働側も規制緩和で雇用の場を生み出そうと考えたのだろう。本来はこの規制緩和の過程で安全網を整備すべきだった」

雇用の原則は直接雇用だというのにはまったく異論はないのですが、例外を認めないというのも硬直的なわけで、はたして登録型派遣の禁止がいいのかどうかは疑問があります。直接雇用となると、企業は職安求人や求人広告などで募集をしなければならず、選考試験などのコストもかかります。必ずしも意図するような人が応募してくれるかどうかもわかりません。これらのコストは当然、労働者の賃金に反映されます。また、働く人も職安に出かけていって求人を探し、面接試験に出かけなければなりません。職安や求人誌の求人を熱心に見たとしても、そこにすべての求人情報があるわけでもなく、希望に近い求人はなかなか見つからないかもしれません。
派遣労働はこうしたコストをスケールメリットによって低下させ、マッチングの効率を高めるしくみであり、職安などによるマッチングを補完するものです。企業にしてみれば、直接採用した場合の労働者の人件費プラス採用コストが派遣料金を上回るのであれば派遣を活用するのが有利になります。単純化して派遣料金が派遣労働者の賃金プラス手数料であると考えれば、手数料が採用コストを下回れば労働者の賃金は直接雇用の場合より派遣のほうが高くなることになります。したがってこの局面では企業と労働者の利害は一致しています。あとは現実にどうなるかで、これはやってみないとわかりません。おそらくはケースバイケースということになるでしょう。いずれにしても、現実をみればかなりの割合の登録型派遣労働者は登録型派遣のしくみを便利に活用し、それなりに満足度高く働いているわけで、連合が「雇用の原則は直接雇用」という原則を貫いて例外を認めなければ、こうした人たちの多くは不便を被ることになるでしょう。まあ、少数の不便は原則堅持のために受容されるべきだということかもしれませんが、それが派遣労働者のための労働運動なのだと言われれば、そこに一縷の疑問は残りましょう。