いすゞ、期間社員の途中解雇を撤回、希望退職募集へ

きのうのエントリの続きですが、具体的にこんな事例が出てきています。一昨日の夕刊で報道された内容です。

 いすゞ自動車は二十四日、同社栃木工場などの期間従業員の契約途中での解雇方針を撤回し、期間満了まで雇用を継続することを決めた。同日午前、労働組合側に文書で通告した。製造業などの一連のリストラで社会問題化した非正規労働者の契約途中での解雇が撤回されるのは初めて。ただ期間満了後に雇い止めする方針は維持しており、同社の非正規労働者が置かれた状況は依然、厳しさが続いている。
 同社によると、対象となるのは約五百五十人の期間社員ら。大部分は来年四月までの雇用契約を結んでいる。いすゞは年末までで解雇すると予告していたが、この途中解雇を撤回する。また契約期間が年末までで、契約を更新しないことを告げていた一部の期間社員に対しても金銭補償などの条件を詰めた上で「合意解約を目指す」(同社)という。
 同日夜、労組側との団体交渉で説明する。ただ、中途解雇が撤回されても期間満了後の契約更新がない状況に変わりはなく、妥結するかどうかは不透明だ。
 同社は十一月十九日、金融危機に伴う減産のため、国内工場の非正規従業員約千四百人の契約をすべて打ち切ると発表していた。
 ただ期間社員の途中解雇について、これまでの判例は労働契約法の「解雇権の乱用」規定を正社員の場合よりも厳格に適用。厚生労働省幹部は「組合からの仮処分申請やその後の裁判で敗訴も予想されることから、解雇の撤回を余儀なくされたのではないか」とみている。
(平成20年12月24日付日本経済新聞夕刊から)

このブログでも繰り返し書いてきましたが、有期契約の従業員を期間途中で解雇するのは重大な約束違反であり、厳しく規制されてしかるべきものです。実際、記事にあるように、裁判でも正社員の解雇よりも厳格に判断されていますが、裁判がどうであれ、撤回は当然と申せましょう。
いっぽうで、各社の報道によれば派遣社員は予定どおり年末で打ち切りということです。詳細は不明ですが、派遣社員についてはいすゞと派遣会社との間で(派遣料金の相当割合を支払うなど)なんらかの決着をつけ、期間途中で派遣終了となった派遣社員については派遣会社がなんらかの補償を行うということでしょうか。
また、きのうのNHKニュースでは「期間従業員が年内に退職すれば契約期間中の賃金の85%相当額を支払う一方、期間満了まで働く場合には、来月以降、休業扱いとして賃金の60%相当額を支払う」と報じられていました(http://www3.nhk.or.jp/knews/t10013223411000.html)。まあ、一種の希望退職ということでしょうか。住居については報道が見当たりませんでしたが、「年内に退職」というのはおそらく住居も年内に退去するということなのでしょう。期間満了まで住居に滞在したいのであれば、賃金は法定下限の休業手当にとどまる、ということでしょうか。解雇を撤回したくらいですから、おそらくは専門の法律家の助言を得て、合法に行える範囲という判断でこうした対応となったのでしょう。
ここで出てくる「労組」は少数組合でしょうが、労組としても、打ち切りを通告された期間従業員派遣社員のユニオンなので、どうぞストライキを打ってください、休業手当を払わなくてすむから助かります、といういかにも弱い立場で、なかなか対処が難しいでしょう。満了慰労金のようなものが設定されていたとしたら、その分も上積みしてくれ、などといった理屈で受取額を増やすというのが現実的でしょうか。あとは対抗手段として訴訟を起こすというのもあるでしょうが、労使交渉を有利に運ぶために訴訟を起こされたのでは裁判所もつらいところでしょうが…。こういうときこそ、いすゞ労組(多数組合のほう)の出番ではないか、と思いもするのですが、これは案外いすゞ労組とは協議のうえ合意した内容だったりするのかもしれません。いすゞ労組の働きかけで解雇が撤回されたとすれば(このあたりまったくの推測ですが)、いすゞ労組もそれなりに一定の役割(十分かどうかは別としても)は果たしたといえるかもしれません。こうした地道な取り組みはなかなか報道されず、少数組合の派手な動きばかりが報道されるというのは、いすゞ労組や上部団体にとってはつらいところかもしれません。