小島貴子『小島貴子式仕事の起爆力』

小島貴子式 仕事の起爆力

小島貴子式 仕事の起爆力

「キャリアデザインマガジン」第79号に掲載した書評を転載します。


 この手のビジネス書というのは、かなりの需要があるのだろう。新聞広告や書店の平台をみても、かなりのペースで類書が発行されているようだし、発行されているということは売れてもいるのだろう。これはグローバル化や技術革新の中、ビジネスパーソンの負荷やストレスが高まっていることの反映かもしれないし、彼ら・彼女らの旺盛な学習意欲の現れかもしれない。
 いっぽうで、こうした本に対して懐疑的なむきもあるだろう。実際、こうした本を読めば本当に仕事がうまくいくのであれば誰も苦労はしないし、苦労がなくなればこれらの本の売れ行きも止まるだろう。まあ、無意味ということはないにしても、あまり大きな期待をかけることも難しいに違いない。時と場合に応じた、自分にフィットする本であれば、それなりに有益なヒントが得られる、というのが現実的なところではないか。
 そこでこの本である。オビには「やる気に火がつく!一気に差がつく!!」「あなたのチカラを200%発揮させる最高のやり方・考え方」「ほんのちょっと視点をズラすだけであなたの仕事・人生が爆発的にうまくいく!」などの惹句が並んでいる。まあ、これをまともに真に受ける人もいないだろうが、著者はキャリア関係者なら知らぬ人のないカリスマ・キャリアカウンセラー、小島貴子氏である。となると、キャリア関係者であれば中身はいかにと関心はわくだろう。
 類書を読んだことのない私には他との比較はできないが、読みやすい本である。全部で7章、82のトピックスと各章末のコラムとで構成されているが、トピックスはすべて見開き2ページにコンパクトにまとめられ、自身の経験や相談事例などをもとに具体的に書かれていてまことに読みやすい。通勤電車などで読むにはおあつらえむきだろう。内容については私には評価できないが、それぞれの読み手が、数多いトピックスの中から、それぞれの個性や状況に応じてさまざまなヒントや励まし、気休め、慰めなどを見出していくのだろう。それに1,400円の値打ちがあるかどうかは読み手一人ひとりの判断だとしか言いようがない。
 それはそれとして、気になるキャリアへの言及は意外にも少なく、最後4つのトピックスにとどまる。うち2つは「適職」に関するもので、「適職」にこだわったり決めつけたりせず、自ら適応する、変化の可能性をつかむことを訴えている。「資格」については、取らないと気持ち悪いが取っても食べられない「足の裏のご飯粒」だと喝破する。そして本書の最後のトピックスが「未来の自分のキャリアデザイン」である。紹介が難しいこの2ページをどう読むか、読む人の読み方によっていろいろだろうが、それはおそらく読み手にとってこの本全体の評価にもかかわってくるのだろうか。