民間じゃないんですから

nifty経由で共同通信ニュースから。きのうの記事です。

 大阪府庁で12日開かれた朝礼で、8月から職員の給与を16−4%カットする府の財政再建策に対し、男性職員が「士気が下がった」と猛反発。橋下徹知事が「私のやり方が合わないなら職をかえて」とやり返す一幕があった。朝礼には健康福祉部などに所属する46歳以上の約140人が任意で参加。知事は「団体交渉の場ではない。上司としてその言い方に注意する。民間では考えられない」と反論したという。
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kyodo-2008061201000273/1.htm

まあ、賃金が下がれば意欲が低下するのは当然のことで、職員にしてみればこれまでの放漫財政のツケを自分たちに回されるのは納得いかないのかもしれません。税収を上回るサービスを大盤振る舞いしてきたのは誰なんだ、負担以上の不相応なサービスを享受してきたのは府民じゃないか、とか、不満はそれこそあれやこれやあるでしょう(まあ、職員の労働条件もそういう意味では不相応に高かったのかもしれませんが)。
「民間では考えられない」というのも、実際民間ではないんですからある意味当然のことですし、民間にも賃金カットされれば一方的に不満を述べる人はいます。それでも民間企業では経営危機にあたって大方の人が賃金カットを受け入れるのは、基本的には賃金カットせずに倒産して失業するほうが賃金カットより困るからでしょう。それに対して、大阪府はいかに財政が破綻しても倒産することはなく、したがって職員が失業することもないわけですから、賃金カットを受け入れるインセンティブはないわけです。財政が危機的なら、それこそ医療費助成なんかやめちまえ、福祉も教育も縮小すればいいんだし、独自課税で増収をはかるとかすればいいじゃないか、せっかく苦労して安定していて労働条件もいい公務員になったのに、この既得権を奪われてたまるか…とまあこんなところでしょうかね。
で、当然ながら府民の見る目はいたって冷たいわけで、週末に報じられていた毎日新聞の調査によれば「橋下徹知事の…財政再建案について、「賛成」は85%で、「反対」の12%を大きく上回った。」「職員の人件費削減では、「賛成」が83%に達した。一般職で平均給与12%、退職手当5%カットと、職員にとっては厳しい減額案も府民の支持は大きい。」ということだそうです。そして「医療費助成の削減を今年度は見送ったものの、来年度からは実施の方向で見直すとしている。この方針に対しては「反対」が75%に達し、生活に影響する事業費の削減などでは抵抗感が大きいことも浮き彫りになった。」というわけですから、要するに府民にしても自分たちの痛みはできるだけ少なく、なるべく他人の痛みで財政再建を、という発想は共通しているということでしょう。まあ、いたって自然な話かもしれません。
したがって、そこは知事と議会のバランス感覚というか、民意を踏まえて調整し、労組との協議なども尽くして、「さすがに府民のサービスをこれだけ削るのだから、職員も無傷というわけにはいかないよね」「府庁は民間と違って倒産・失業の心配はないんだから、その分は賃金が低くてもいいはずだよね」などなど、うまく落としどころを探すことが大切なのでしょう。実際、そうやっているのではないかと思います。それでもどうしても我慢ならないというのであれば、橋下知事の言うように、既得権を捨てて転職するのとどちらが得かをしっかり考えてもらうしかないのでしょう。で、「今後、これ以上追加的な賃金カットが必要にならないように、職員みんなでしっかり働きましょう」という雰囲気が出てくれば、多少は民間に近づいてくるのでしょうか。