消費税?育児保険?

きのうの続きで社会保障審議会少子化対策特別部会の「次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けた基本的考え方」の感想を書いていきたいと思いますが、質を確保しつつ量を大幅に拡充しようとすれば、それに必要な費用も膨大なものとなるでしょう。実際、この提言では量的拡大にあたって「従事者の中長期的な需給を見通しながら、その確保のための方策を検討していく必要がある。その際には、仕事と生活の調和や働き甲斐、キャリアパスなど、人材の定着に向けた働き方や処遇のあり方についても、併せて検討する必要がある」と述べ、質の確保においても「将来的に優れた人材確保を行っていくためには、保育士等の従事者の処遇のあり方は重要であり、サービスの質の向上に向けた取組が促進されるような方策を併せて検討すべきである」と述べるなど、保育サービス従事者の処遇改善に並々ならぬ熱意を見せています。世間には公立保育所職員の年功的な高賃金が問題視されている現実があるにもかかわらずここまでしゃあしゃあと書き並べるのはなかなかの神経だなという印象は禁じ得ませんが、財源不足で処遇改善がなかなか進まない介護職員の二の舞はごめんだという気持ちもまあわからないではありません。
さて提言はその他にも多数の施策を網羅的に並べていますし、「育児休業の取得促進には育児休業給付が重要であるなど、現金給付についても議論が必要である」というまことに気前のいい記述もあるなど、はたしてどれほどの財源が必要となるのか見当つきかねる感もあります。
そこで財源ですが、「新制度体系において必要な費用の負担のあり方を考えるに際しては、次世代育成支援が、将来の我が国の担い手の育成を通じた社会経済の発展の礎(未来への投資)という側面を有することを踏まえ、社会全体(国、地方公共団体、事業主、個人)で重層的に支え合う仕組みが求められる」とされています。「我が国の次世代育成支援に対する財政投入は、諸外国に比べ規模が小さい」ことも事実ですし、出産・育児には外部経済があるから公的助成になじむとの主張ももっともだとは思います。
で、具体的にどうするかという点については、事業主や利用者に一定の負担を求めることと地方財政低所得者に配慮することが述べられているだけで、あとは今後の議論を待つという姿勢のようです。
これに関しては、世間では「消費税引き上げを念頭に置いている」という受け止めがされているようです。まあ、行政サイドからそういう説明があったのかもしれません。ただ、本文を読む限りでは、私には消費税増税よりは育児保険が念頭に置かれているように思われます。そもそも「新たな制度体系」という表題自体が、新制度=育児保険を連想させますし、「介護保険を教訓に、保育職員のために十分に潤沢な財源を確保したい」という発想とも整合的でしょう。
経団連は育児保険には絶対反対という立場のようですが、私は個人的には(以前もこのブログで言及していますが)育児保険は十分考慮に値するアイデアだと思います(まあ、制度的に必ずしも「社会保険」と言えるかどうかは別問題として)。財源に関しては、高齢世代から育児世代への移転が進むよう、資産課税的なものを中心に考えていくのが望ましいのではないでしょうか。