組合原理主義?

今度はこれで引っ張ろうという魂胆がみえみえだろうと思いますが、今日もきのうに続いて「日経ビジネス」の特集「だから女は働かない」からです。きのう紹介した部分に続いて「私たち働きません!だから女性活用は失敗する」というコーナーが来るのですが、これは基本的に「いかに自分の職場はひどい職場か」と、そこで働く女性が訴える、という内容です。話半分というところもあるでしょうし、それが日経ビジネスということでさらに倍になっているのではないかという気もしないではないですが、まあひどい職場があることも事実でしょうし、女性活用が建前だけに終わっている企業、女性活用の手際の悪い企業も当然あるのでしょう。
ただ、労組に対しても「組合原理主義」と非難しているのですが、これはいささか気の毒な感じがしますので取り上げてみます。私が労組を弁護する義理もないのですが…。

 大手自動車メーカーに勤める長谷川愛さん(仮名、20代後半)は労組の態度に唖然とした。
 女性社員を中心に「時間休」の制度導入に取り組むように求めていたのに、すげなく断られた時のことだ。会社も理解を示していただけに、ショックは大きかった。
 労組が拒否した理由は「本来、有給休暇は丸1日休むことに意味がある。半日や数時間では心身が休まらないし、労組の伝統に反する」というものだった。
 長谷川さんたちは会社を休んで楽をしたいわけではない。子供が熱を出した時、出勤前に病院に寄るなど、半日も休めば十分という場合がある。その時に丸1日休んでしまえば、職場に迷惑がかかるし、自分のキャリアにも差し障る。そんな長谷川さんたちの切なる願いの前に立ちはだかったのが、味方のはずの労組だった。
(「日経ビジネス」2008年3月10日号(通巻1432号)から、以下同じ)

小見出しは「労組は守ってくれない」になっていますが、さすがに労組に何から何まで守ってくれ、というのは無理があるのではないでしょうか。
まず、「本来、有給休暇は丸1日休むことに意味がある」というのはまったくの正論であることを確認しておく必要があります。というか、本来の年次有給休暇は、「丸1日」どころか「連続休暇」であるというのがむしろグローバル・スタンダード(少なくとも大陸欧州では常識)と考えるべきではないかと思います。また、「半日や数時間では心身が休まらない」というのも、労働者の心身の休養や活力の養成を図るという年次有給休暇の趣旨からすればまことに正論です。「半日も休めば十分という場合がある。その時に丸1日休んでしまえば、職場に迷惑がかかるし、自分のキャリアにも差し障る」というのは一面の現実でしょうが、本来なら1日休みたい、休めるのに、時間休制度があるんだから2時間だけ休めばいいだろうと言われる、というのもやはり一面の現実でしょうから、労組としては両方に目配りせざるを得ないはずです。
「大手自動車メーカー」ですからフレックスタイム制もあるでしょうし、育児時間制度もあるでしょう。まあ、時間休は有給という点では魅力があるかもしれませんが、それにしても、そもそも年次有給休暇の取得促進に一生懸命取り組まなければならないときに、さらにコマギレで取れるようにするということに労組がどれほど注力しなければならないのか、当然そこには優先順位の判断が働くだろうと思います。労組としては組合員(さらには労働者)全体の利益を考慮するわけですから、一部の組合員の一部の要望にすぐに対応しないから「守ってくれない、けしからん」というのも気の毒な感じがします。