年次有給休暇の買い上げ

次は土曜日の朝刊です。記事の本筋とは関係ないネタなのですが…

 欧州の自動車業界でワークシェアリング(仕事の分かち合い)の動きが加速してきた。各社は昇給停止や時短勤務拡大に踏み切る一方、現状の雇用は極力維持する方針。スウェーデンボルボ・カーは全社員の昇給と賞与の支給を停止、仏ルノーは休日の買い上げ制度の利用「自粛」を求める。世界的に自動車市場が冷え込むなかで、雇用維持とコスト削減を両立させる苦肉の策が続きそうだ。

 仏ルノーは今月、労使で一年間限定の「危機対応契約」を結んだ。同社は社員の未消化の休日を買い取る制度を導入しているが、幹部や管理職に対し同制度の利用の一部自粛を求める。労働者の権利が厳格に守られている仏では異例の措置だ。
 ルノーは仏政府からの低利融資の見返りとして国内雇用の維持を強く求められており、従業員の大規模な削減が難しい。このため、休日買い上げ制度の一部返上と定昇見送りによるコスト削減で対応する。
(平成21年3月28日付日本経済新聞朝刊から)

私が反応したのは、仏ルノーが「社員の未消化の休日を買い取る制度を導入している」という部分です。だいぶ以前になりますが、米ヒューレット・パッカードに年休買い取り制度があるという記事があり、そのときに同様の疑問を感じて(http://www.roumuya.net/zakkan/zakkan13/nenkan.html)米国在勤の友人に聞いてみたところ、「欧州はともかく、米国では普通にあるよ」とのことでしたが、欧州でもそうなのでしょうか?
わが国の年次有給休暇の取得率が低い(これは事実ですし、改善の必要がありますが)という話になると、必ず「欧米では完全取得が当たり前なので付与日数の統計しかなく、取得日数や取得率のデータはない」というような話を聞かされます。しかし、買い上げ制度があるということは、現実には取得されずに買い上げられる年次有給休暇もかなりあるのではないでしょうか?で、「幹部や管理職に対し同制度の利用の一部自粛」というのは、要するに余った年次有給休暇(の一部)を捨てましょう、ということでしょう。この書き方をみると、幹部・管理職以外でも相当の年次有給休暇が買い上げられている(例外的なものではない)ことが伺われます。実態はどうなのでしょうか?
わが国では、年次有給休暇の買い上げについては、結果的に時効にかかってしまう分を買い上げるのはいいけれど、「買い上げるから取得するな」というのは(法定分は)ダメ、ということになっていたと思います。まあ、たしかにわが国では、年次有給休暇の買い取り制度を導入したら、ますます取得率が下がりそうだというのが偽らざる実務実感(根拠なし)ですから、取得を増やそうという政策的意図があるのであれば買い取り制度は奨励できないでしょう。とはいえ、しかしこうした環境の違いを無視して「日本の取得率は低い」とばかりいうのも、いささか平衡を欠くような気がします。