医師不足

今朝の日経から。

 大阪地裁は今年五月、愛媛県新居浜市の十全総合病院に勤めていた麻酔科医(当時28)の自殺は過労が原因だとする判決を下した。病院側は大阪高裁に控訴したが、「近隣病院が医師不足で診療科を減らしたあおりで患者が急増し、医師の労働環境がきつくなっている」と打ち明ける。「緊急を要する救急も断らざるを得ない状況に追い込まれている」という。
 医療過誤の訴訟リスクの高い産科や、診療に手間がかかる小児科も敬遠され、残った医師の負担が増えている。今年三月には東京地裁が、立正佼成会付属佼成病院(東京・中野)の小児科医(当時44)の自殺は「仕事のストレスによるうつ病」が原因の労災と認める判決を出した。
 研修医にもしわ寄せがきている。二〇〇六年四月には週八十七時間も働いていた日大板橋病院の研修医(当時26)が自殺した。
(平成19年12月12日付日本経済新聞朝刊から)

労働条件の過酷さに加えて、記事にもあるように、訴訟リスクの高まりも医師確保のうえで問題なのではないでしょうか。たしかに医師の過失の結果は重大なものとなることが多いでしょうし、医師が責任を負うべき過失もあるでしょう。いっぽうで、過失はゼロであるべきですが、現実にゼロにすることもまた無理というべきでしょう。真面目に最善を尽くした過程でなんらかの過失があった場合、あまりに過酷に追及されるようだと、その仕事のやり手がなくなるのは当然だと思うのですが。
産科で医療訴訟が多いのは、他の診療科と異なり、産科では「新生児の誕生」というすばらしく幸福な期待と、結果との落差が大きいからだという説明を聞いたことがあります(本当かどうかわかりませんが)。気持ちはわかるのですが、だから医師の責任がより厳しく追及されるというのも変な話のような気がします。