安心して機密漏洩できますね

今朝の日経新聞は、社説で「僕はパパを殺すことに決めた」の著者である草薙厚子氏に供述調書の内容を漏洩した精神科医が逮捕されたことに対する批判を展開しています。

 奈良県内の医師宅放火殺人事件を扱った単行本をめぐる検察当局の捜査が異例の展開を見せている。中等少年院送致となった長男(17)らの供述調書をこの本の著者であるフリージャーナリストに漏らしたとして、奈良地検は長男を鑑定した精神科医を秘密漏示の疑いで逮捕した。
 精神科医や著者側の行為には問題が多い。とはいえ、あえて逮捕という強硬手段まで取る必要があったのだろうか。これが前例となってメディア全般の取材活動を萎縮させる恐れもあり、憂慮せざるを得ない。
(平静19年10月16日付日本経済新聞朝刊・社説から、以下同じ)

このあと、「この機密漏洩がいかに重大な問題かということはよーくわかってるよ」ということがくどくどと書かれたのち、こう論じています。

 これらを十分に考慮しても、情報源とされる精神科医の逮捕はなお重大な問題をはらんでいる。
 捜査当局が容疑者の身柄を拘束するのは、原則的には逃亡や証拠隠滅を防ぐためだ。この事件の場合、在宅のまま処分する道もあったのではないか。それをあえて逮捕に踏み切ったことは、今回のようなケースではなくとも取材源からメディアへの情報提供を抑制し、取材活動を制約する弊害をもたらしかねない。
 今回の事件そのものは極めて特異であり、一般的な報道のあり方とは同列に扱えない側面がある。それゆえ、一連の捜査については許容する声もあった。ところが奈良地検は逮捕権まで行使してしまった。この事件の捜査で許される一線を踏み外したのではないか。

逃げたりする心配がないのに逮捕したのがけしからんというのではなく、メディアに機密漏洩しても逮捕まではされないよ、ということにしてくれないと安心して機密漏洩してもらえなくなっちゃうから困ります、ということですなこれは。なにが「許される一線」なんでしょうかねぇ。これでは自分の商売に役立つんだから、おっと失礼、真実の報道という崇高なる目的のためであれば法律違反もなんのその、 という態度だと思われても仕方ありません。こんな新聞にコンプライアンスがヘチマとか経営倫理がすべったころんだとか言われたくないですよねぇ。