日野市立病院

日野市立病院の副院長が新設の市民健康相談室に異動を命じられたのは不当だとして争っていた事件で、東京地裁は異動を取り消す判決を示しました。毎日新聞の多摩版から。

 日野市立病院の副院長だった男性(60)が、退職勧奨を拒否したら不当な降格処分を受けたと主張した訴訟の判決で、東京地裁は16日、市の処分を取り消した。松田典浩裁判官は「患者の信頼を損なう言動はあったが、副院長の職務に必要な適格性を欠くとは言えない」と述べた。
 男性は06年4月、市役所の市民健康相談室に異動を命じられ、「利用者がほとんど来ない閑職に追いやられ、手当がなくなって給与が20万円減った」と主張。市は「給与ランクは変わっておらず、降格に当たらない。適材適所の人事」と反論した。
 判決は、男性が手術ミスや患者に居丈高な態度を取るなどしたため、排除を目的とした処分と認定。「市は、処遇に困った男性の配置先を確保するためだけに相談室を設置しており、処分は裁量の範囲を逸脱する」と指摘した。【伊藤一郎】
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20091117ddlk13040331000c.html

NIKKEI NETではこう報じられています。

 東京都日野市の市立病院副院長から市庁舎内の市民健康相談室に異動を命じられた男性が、「退職勧奨を拒否したためで受け入れられない」として市に取り消しと500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は16日、「あからさまな報復とは言えないが、病院からの排除が目的だった」として異動を取り消した。賠償請求は棄却した。
 松田典浩裁判官は「副院長の処遇に窮した市が、受け入れ先とするためだけに形ばかりの相談室を新設した」と判断した。
 市の退職勧奨自体については「病院の多額の赤字を問題視して経営一新を図る目的があり、不当とは言えない」とした。
 市側は「男性に医療ミスや患者らの信頼を損なう言動もあった」と主張したが「ただちに副院長としての適格性を欠くとは言えない」と退けた。
 判決によると、男性は2001年に私立大の付属病院から日野市立病院の副院長に就任。06年4月に副院長職を解かれ、相談室勤務となった。市は「判決を見ておらずコメントできない」としている。〔共同〕 (07:00)

共同通信の配信のようですが、毎日と補完的な内容になっていて、ふたつあわせて読むと全体像がなんとなくつかめる不思議な報道です。
「医療ミスや患者らの信頼を損なう言動」というのは具体的には「手術ミスや患者に居丈高な態度を取るなどした」ということのようですが、市がそれで「副院長としての適格性を欠く」と主張するのなら、だったらそんな奴を副院長になんかするなよ、と言われても仕方がないような。まあ、副院長になった当時は十分適格な人材だったのかもしれませんが。とはいえ、それならそれで逆に、それほどの人を適格性を失いつつあるからといっていきなり月収20万円ダウンの閑職に追いやるというのも人事管理上いかがなものかという印象もあります。
まあ、「多額の赤字を問題視して経営一新を図る」という必要性に迫られて、周囲や組織全体に対するアナウンス効果も考えてのことかもしれませんが、はたしてこの仕打ちを回りはどう見ていたのでしょうか。やるならやるで、わざわざそのために閑職を新たに設けるというやり方はやはり稚拙であるという印象は否めず、本人の気持ちなどにも配慮した目立たないやり方を考えるべきだったのではないかという感想です。