ハローワークの民間開放

【主張】ハローワーク 理解できぬ民間開放反対

 ハローワーク公共職業安定所)業務の民間開放がなかなか進まない。厚生労働省が、民間委託は国際労働機関(ILO)の条約に抵触するとして、公共サービス受託を官民の競争入札で決める「市場化テスト」に激しく抵抗しているためだ。
 雇用の流動化が進む中で、官業ゆえの非効率性、機能の硬直性が指摘されているというのに、こうした厚労省のかたくなな姿勢は理解に苦しむ。運営官庁としての権限縮小を恐れる独善的な抵抗といわれてもやむをえまい。
 厚労省が主張するILO88号条約は60年近くも前、国の指揮監督の下で公務員による全国的な職業紹介組織の設置を義務づけたものだ。民間業者による人身売買や不当な中間搾取の防止が最大の狙いであり、日本のような先進国では既に過去の遺物になっている。実際、イギリスやイタリアなどは条約からの脱退を決めている。
 大田弘子経済財政担当相の下に設けられた専門家による私的懇談会も、先ごろ、ハローワーク業務の民間委託は「条約上の問題を生じない」とする多数意見をまとめている。
 国が国民の雇用に責任を負うのは当然としても、それがハローワーク業務を公務員に一元的に担わせる理由にはならない。ハローワークを通じた就職が全体の2割まで落ち込んでいる現状を考えればなおさらである。
 景気回復に伴って雇用環境は改善傾向にはあるものの、失業率は目立った改善をみせていないのが実情だ。ハローワークによる求人企業へのアプローチ不足や、求人と求職のミスマッチに有効策を講じえなかったことも原因に挙げられている。そのハローワークの運営には、年間1900億円の予算と全国で2万3000人の職員が投じられている。仕事内容に照らして妥当なのかとする批判も根強い。
 市場化テストも一部受け入れた例はあるが、雇用情勢が厳しい地方の求人開拓などにとどまっている。これでは自らが嫌な役回りを民間に押しつけただけだといわれても仕方がない。
 安倍晋三首相も先の経済財政諮問会議の席上、柳沢伯夫厚労相に対して改めて市場化テストの促進を指示した。厚労省は省益優先の姿勢を改め、国民の視点に立つときがきている。
(平成19年4月16日付産経新聞朝刊から)

市場化テストも一部受け入れた例はあるが、雇用情勢が厳しい地方の求人開拓などにとどまっている。これでは自らが嫌な役回りを民間に押しつけただけだといわれても仕方がない。」そのとおり(それより前段はともかく)。民間がやっていい、やれる、やりたい部分は基本的に積極的に民間開放し、民間にやらせるべきでない、やれない、やりたがらない、しかし必要な部分は官が責任を持つというのが官民の役割分担の基本だと思います。