男性の育児休業

 「長期の育児休業どころか、短期でも無理」。日本企業ではまだこんな父親が多いだろう。しかし育児休業・休暇の有給化や取得呼び掛けなどで後押しする企業も増えている。短くてもゼロよりは育児にかかわる一歩になる。壁を突破するコツを探った。
 一歳の子どもがいる日本綜合地所の営業企画課、石山壮久さん(33)は、三月中旬の火―木、三日間の育休をとった。育児休業の五日間を有給化し、男性社員に強く奨励する社の制度を利用した。

 壁を突破するコツの一つは、職場になじみやすい期間を探ることだ。日本綜合地所では「年一回、一週間の海外研修があり、この程度のフォローには職場が慣れている」(経営企画室)。石山さんも「もう少し工夫すれば一週間は休めたかも」と話す。
 二〇〇六年以降に男性七人が育休を取った精米機メーカー、サタケ(広島県東広島市)。一カ月程度の長期出張は珍しくなく、その間の仕事を周囲で補完してきた経験が育休取得の追い風になっている。
 「いつも職場内で業務を分担している出張と同じと思えば、いい。仕事のやり方を見直し、他のメンバーの能力アップを図るチャンスにもなるから、と快く送り出すよう呼び掛けている」と木谷博郁人事部長。

 ただ、こうした短期の休みであっても、多くの取得者が「半強制的に誰かが取らないと広がらない」「会社の後押しがなければ取れなかった」と口にする。
 制度を広めようと率先して、二十二日間、休んだライオン上席執行役員の大野憲弘さん(60)は、「いくら制度を作っても、『育児は女性の役割』『育休を取ると人事評価で不利になりそう』と思う人が多ければ使われない。社会全体でこうした意識を変えていくことが欠かせない」と話す。
 「これからは当たり前のことになる。きっぱり忘れて休みなさい」。サタケ人事部の豊田晃さん(36)は、三十一日間の休み中、近所の年配の人にかけられた言葉が忘れられない。
 ちょうど職場への負い目や、平日に家にいることへの周囲の目が気になったころ。「すっと楽になった」という。男性の育児参加がどこまで進むかは、こうした草の根の応援にもかかっていそうだ。
(平成19年4月12日付日本経済新聞夕刊から)

研修とか出張とかの仕事と育児が同じとはいかないでしょう。たとえば、病気で休んだとしても職場で「けしからん」という話にはそれほどならないでしょうが、昇進とかには影響する可能性はあるでしょう。育児休業も同じことで、『育児は女性の役割』(だから男性が育児休業を取るのはけしからん)という意識を改めることは大切ですが、『育休を取ると人事評価で不利になりそう』というのは受け入れるしかないのではないでしょうか。