男性の育休取得に必要な意識改革

昨日に続いて先週金曜日の日経夕刊から。昨日取り上げた記事のとなりの「私もひと言」という読者オピニオンのコラムで、こちらは男性の育児休業の話です。

…例えば、会社の中で「できる」と認められている人が率先して取得し、「仕事ができる人は育休を取る」といったイメージを社内に定着させるべきだ。(契約社員、34歳、女性)
…育休を取得する労働者は会社にとってマイナス、との考え方が経営陣の本音ではないか。会社が事実上の義務化をしない限り、男性の育休取得は無理だと思う。育休が昇進面や給与面でマイナスにならないような制度の整備も欠かせない。(会社員、37歳、男性)
 男性が意識改革をして育児に協力しないと、子どもを産まない女性や結婚しない女性が一段と増えていくと思う。(パート、55歳、女性)
…やはり正社員が減っているこのご時世、自分の将来やほかの人への負担なども考えると、社内で言いだしにくい雰囲気が依然としてある。経営陣の意識が変わらないと、現場は変わらない。(会社員、34歳、男性)
(平成18年8月25日付日本経済新聞夕刊から)

この4人で全部です。うち3人までが「仕事ができる人」「昇進面や給与面」「自分の将来」と、キャリアの上での問題点を指摘しています。やはり、「キャリア面での支障」が男性の育児休業の大きな阻害要因となっているのでしょう。
とはいえ、やはり一定の長期間仕事を休むとなると、よほど「仕事ができる人」でない限りは、ある程度はキャリアに影響が出るのは避けられないでしょう。これは限られた賃金原資やポストをめぐる競争がある以上は致し方のないことでしょう。競争条件をあわせるためには「義務化」しかないわけで、そういう意味で2番目の人の意見はなかなか鋭いのですが、しょせんは子どもの数や生まれた時期が同じでなければ競争条件も同じにはならないわけで、そう考えると義務化はかえって「育休取得したくないから子どもをつくらない」という判断を助長する危険性すらあります。子どもが生まれる時期というのがキャリア形成上も重要な時期にあたることが多いのが特につらいところです。まあ、再チャレンジ可能な能力重視の人事制度を導入することである程度は対応できるでしょうが…。
ですから、「仕事ができる人は育休を取る」というのは、それだけだとごく一部の人しか育休が取れないわけで、日本男性の意識を「仕事ができる人が、キャリアを多少犠牲にしても育休を取るのがカッコイイ」ひいては「(普通の人?が)キャリアを多少犠牲にしても育休を取るのはすばらしい生き方」という方向に変えていかなければ、男性の育児休業はなかなか進まないでしょう。
「育休を取得する労働者は会社にとってマイナス、との考え方が経営陣の本音」という企業もまだあるのでしょう(ワーク・ライフ・バランスに取り組む企業は増えていますし、すべてがそうだということは決してないでしょうが)が、これはやはり、第一には働く男性の気持ちの問題だろうと思います。