覚え書き

米国で、企業経営者(一部でしょうが)の高額報酬に対して批判の声があがっているようです。

 米国で企業の役員報酬への監視の目が厳しくなっている。議会下院が役員報酬株主総会の承認事項とする法案を審議しているほか、年金基金など機関投資家も独自に企業への働きかけを強めている。業績が伸びなくても高額報酬を手にする経営者が後を絶たず、企業統治コーポレートガバナンス)への不信感が再燃している。

 批判の背景には、一部企業の役員報酬が業績と無関係に高騰を続けていることがある。
 一月に退任した小売り大手ホーム・デポのロバート・ナルデリ前最高経営責任者(CEO)は、六年前の就任時より株価が下落したにもかかわらず、二億一千万ドル(約二百四十六億円)の退職手当を受け取った。製薬大手ファイザーのヘンリー・マッキネル前CEOも昨年七月までの五年間に株価が四割下落したが、年金や株式を含む退職金は二億ドルに上った。

 経営者報酬への批判の根底には、拡大する一方の米国の経済格差がある。米シンクタンクの調査では一九六五年に企業の最高経営責任者(CEO)と労働者の報酬格差は二十四倍だったが、八九年には七十一倍、二〇〇五年には二百六十二倍に拡大。報酬の絶対水準そのものが高すぎるという批判は根強い。…米連邦準備理事会(FRB)によると、七九年には米国の世帯の上位一%が全所得の八%を占めていたが、〇四年には一四%に拡大した。社会的弱者の保護に積極的な民主党が議会で多数を占めたことで、格差の観点からの高額報酬批判が厳しくなりそうだ。
 日本では今のところ役員報酬への批判はほとんど聞かれない。「役員の大半が従業員からの昇格者で、報酬の水準が従業員とそれほど差がない」(東京商工リサーチの棚瀬桜子・経済研究室長)ためだ。野村総合研究所によると、上場企業の五九%が役員報酬を業績連動型にしており、役員報酬が業績と無関係に高騰する可能性も小さい。
(平成19年3月13日付日本経済新聞朝刊から)

株主が監視する、ということは、記事中にもあるように「業績が伸びなくても高額報酬を手にする経営者」がけしからん、ということなのでしょう。しかし、格差問題という意味で重要なのは「業績をすばらしく伸ばした経営者であっても、報酬が青天井であっていいわけではなく、社会的に容認される範囲がおのずと存在するのではないか」という点ではないでしょうか。この点、日本企業の経営者というのは(サラリーマン経営者に限った話かもしれませんが)なかなか節度があるようです。米国の経営者の破廉恥な高額報酬を是正するには、報酬の上限を決めるというのも妙な話なので、たとえば一定水準以上については急激に累進的な税を課すといったことが考えられるでしょうか?