均衡失業率

今朝の日経新聞は、労働需要が旺盛なのに失業率が低下しないことについて、均衡失業率が上昇している可能性を指摘しています。

 失業には、景気低迷による企業の採用減などが原因の「需要不足失業」と、景気の変動とは無関係で雇用のミスマッチなどが主因の「構造的失業」とがある。
 景気拡大で需要不足失業がゼロになり、簡単には減らない構造的失業だけが残った時の失業率を、構造的失業率とか「均衡失業率」と呼ぶ。
 ニッセイ基礎研究所によると、均衡失業率は1970年代から90年代はじめまでは1%台後半から2%台前半で安定していたが、バブル経済の崩壊を機に2%台後半に上昇。90年代後半から3%台へと徐々に水準が切り上がってきた。民間エコノミストの間では、直近では3%台半ばから同後半との見方が増えている。
 経済のグローバル化が進むなか、企業が社員に求める能力が高度化し、求職者と条件が折り合いにくくなったのが上昇の一因。終身雇用制が崩れ始め、自発的に勤務先を辞めて次の勤務先を探す個人が増え「労働市場が流動化してきた」(ニッセイ基礎研の斎藤太郎氏)という面もあるとみられる。
(平成18年11月1日付日本経済新聞朝刊から)

均衡失業率が上がっている、というのは実務実感としても感じるところではあります。ただ、要因はこういうものだけなのでしょうか。
いかに完全雇用であっても、転職のため、あるいは倒産などによって失業状態になる人は一定割合は存在するわけで、それに相当するのが「均衡失業率」だということではなかったかと思います。そう考えると、均衡失業率の上昇には、有期雇用で失業状態になりやすい非典型雇用の比率が上昇したことも、一定の寄与をなしている可能性が高いのではないでしょうか。とりあえず、能力のミスマッチよりはかなり影響が大きいのではないかと思うのですが…。ちなみに、「労働力の流動化」というのも、もともとは移動性の高い非典型雇用が増加したことをとらえた表現でした。また、能力のミスマッチによる失業期間の長期化というのは、実は構造的なのか需要不足なのかはっきりしないところも多分にあります。
ひょっとしたら、均衡失業率の上昇をこうしたさまざまな要因に分解した推計もすでにあるのかもしれませんが、直観的にはこんな感想を持ちました。