長寿企業に学ぶ

一昨日(20日)の日経新聞「経済教室」に、舩橋晴雄一橋大客員教授の「経営理念 長寿企業に学べ」との論考が掲載されています。略歴によれば「専門は企業倫理」とのことですが、この人はたしか元国交省のキャリア官僚で、建設業界が談合まみれだった時期の建設行政に関わっていたことになり、それで専門が「企業倫理」というのは若干悪い冗談めいています(笑。ちなみに著名なジャーナリストである朝日の船橋洋一氏の実弟のようです)。
さて、おふざけはさておき、内容では江戸時代、あるいはそれ以前に創業された長寿企業「新日本永大蔵」の事例調査結果で、なかなか納得いくものがあります。

…その第一は、法令遵守への強いこだわりだ。…「御公儀様の法度は申すに及ばず」といった文言が、家憲家訓などに記されている例は多い。社会的に非難を受ける可能性がある商いには臆病なくらい慎重である。
 第二に、これら企業の経営者の多くは、企業を自分のものだと思っていないことである。…創業者一族が過半の株式を有し、企業は代々受け継がれてきた。これを後代にたしかにつなげていかなくてはならない。自分はバトンリレーのランナーのような者だというのである。後を継ぐ者のことを考えれば、おのずと長期的視野に立たざるをえない。
 第三に、企業を社会的存在ととらえていることである。…企業を支える人々との良好な関係の構築に熱心なのである。今日の言葉でいえば、ステークホルダー重視の経営といえる。
…長寿企業の場合、株主と経営者が一致しており、そうした対応がしやすいが、公開企業でも株主と経営者がその企業評価の物差しと時間軸を一致させることは、企業の持続的発展に資することになるに違いない。
 このような観点から長期保有株主を増やし、企業に長期的視野に立った経営を可能とするような各般の措置が講じられるべきと考えられる。
(平成18年9月20日日本経済新聞朝刊「経済教室」から)

まことに同感です。舩橋氏はこの後、長期保有株主優遇の具体的アイデアをいくつか展開していますが、私としてはもっと直截に、短期保有株主の権利を制約することが望ましいと思います。
舩橋氏は企業倫理専門のコンサルティング・ファーム「シリウスインスティテュート」を経営しているとのこと。有意義なコンサル活動に期待したいところです。