余計なお世話か適切な指導か

今朝の日経新聞から。雇用失業情勢の好転を感じさせる話題です。

 厚生労働省ハローワーク非正社員求人を出す企業に対し、正社員求人に切り替えるよう促す。3週間応募のない求人を出したすべての企業の担当者に対してハローワーク職員が面談し、契約形態や賃金など求人内容を見直すよう助言する。雇用の回復で職探しをする人の正社員志向が高まっているためだ。
 3週間応募のない求人は2005年度には160万件程度あり「ほとんどが非正社員の募集」(職業安定局)。正社員への募集切り替えが進めば職を見つけて就職する人が増え、6月で4.2%(季節調整値)の完全失業率の低下につながる可能性がある、と厚労省はみている。
 厚労省の調べではハローワークの求人の充足率は正社員で25%程度。4件に1件は決まっていることになる。非正社員求人の充足率は20%以下にとどまっている。
(平成18年7月31日付日本経済新聞朝刊から)

ふむふむ。余計なお世話といえば余計なお世話、適切な指導といえば適切な指導です。正社員雇用を増やしたいと思って指導するなら余計なお世話ですが、求人が充足されずに困っている企業を助けたいと思っているなら、場合によっては適切な指導かもしれません。
そもそも、求人側も求職側もなるべくいい条件を求めているわけで、なかなか折れ合わないのがむしろ普通でしょう。そこで、求人側は人手がほしければ条件を上げ、求職側は職に就きたければ条件を下げるということで、お互い妥協していくわけです。正社員か非正社員かというのも、その条件の一つに過ぎません(重要な条件ではありますが)。求職者としては、多くの場合は正社員のほうが非正社員より魅力的でしょうが、労働時間や職種などを総合的に勘案すれば非正社員を選ぶこともあるかもしれません。求人側としても、将来の基幹的戦力を養成するためにぜひとも正社員がほしいというケースも多々あるわけで、世間で単純に考えられているように「低コストだから非正社員がいい」と単細胞に考えているわけではありません。
そういう意味では、記事にあるように「契約形態や賃金など求人内容を見直すよう助言」するというのは適切な対応といえましょう。先行き不透明なことを考えるとやはり正社員は増やせない、しかし人手は欲しいというのなら、正社員志向が高まっている中では賃金などの条件を上げなければ非正社員の採用は難しいですよ、というのはもっともな指導だと思われるからです。いっぽうで、「非正社員=悪い働き方」という固定的・画一的発想で「非正社員求人を出す企業に対し、正社員求人に切り替えるよう促す」のであれば、それは余計なお世話というしかありません。
実態はどちらなのでしょうか。もちろん、その間のどこかなのでしょうが、記事からみれば前者に近いような気はしますが…。