「原告を求む」by連合

週末の報道から。

 連合の高木剛会長は、正社員とパート労働者との賃金格差を是正するため、裁判闘争も検討する方針を明らかにした。パート、派遣労働者など非正社員が急増する中、拡大し続ける賃金などの格差是正に強い姿勢を示したものと見られる。…正社員と同じ仕事をしているパート労働者の賃金が正社員の賃金の8割の水準を下回ったケースを違法とした判決を紹介し、「実際は正規賃金の5〜6割の水準が広がっている。民法公序良俗違反、不法行為に当たる問題を放置していいのか」と訴えた。その上で「どんどん裁判をやっていきたい。証拠さえあれば勝てる裁判で、みなさんに原告を探してほしいというお願いをすることになるかもしれない」と話した。
(平成18年6月17日付毎日新聞朝刊から)

こういうのも労組の運動論としてありうるのでしょうか。


「正社員と同じ仕事をしているパート労働者の賃金が正社員の賃金の8割の水準を下回ったケースを違法とした判決」というのは丸子警報機事件の一審判決のことを指しているのでしょう。これは均等処遇論者が好んで引き合いに出す判決ですが、裁判例としてはかなり異例のもので、むしろ類似の裁判例が他には見当たらないことのほうを重視すべきだろうと思います。「証拠さえあれば勝てる」というのはいかにも能天気でしょう。実際、丸子警報機の場合はパート差別というよりは(実際、このパートはフルタイム勤務でした)女性差別であり、既婚者差別であり、組合差別でもあるという事件でした。通常の短時間労働者にまで一般化するのはいかにも無理がありそうです。
いかに連合が気合を入れても、この手の事件で連合が原告になるのは無理でしょうから、パート労働者に原告になってもらわなければならない(原告を「探す」というのもそういう意味でしょう)わけです。なってもらう以上はそれなりの「勝ち目」がなければ無責任だと思うのですが、はたして連合は責任をとるだけの自信があるのでしょうか?
そういえば丸子警報機事件に関与した労組は非連合系でした。連合としては対抗上同様の実績をあげる必要があると考えているのかもしれません(そんなことないか)。
それにしても、やはりまずはパートを組織化して、団体交渉で待遇改善を求めていくというのが労働運動としては正攻法なのではないでしょうか。法廷闘争も国会闘争も悪いとはいいませんが、あまりそちらに傾くとかえって組織の力が弱まりかねないと余計な心配。