仕事と休みの境界

日経新聞の特集シリーズ「ネットと文明」、新たにスタートした第5部は「カイシャ変容」となっています。

 3月上旬、ヒルズ内の66の企業や事業所に封書が一斉に届いた。差出人は三田労働基準監督署。休日や残業手当など労働実態について調査票への記入を求め「自主点検して頂き、問題が認められた場合は改善をお願いします」と結ぶ。
 その一社。ホームページの早朝の更新に向け、深夜は作業のヤマ場だ。桜田健(仮名、30)はわずかな仮眠で作業を続ける。やり遂げれば達成感があるし「成果次第では給料が増え、好条件で転職できる」。ネット系の開発現場には毛布や寝袋の持ち込みがざら。「泊まってでもやれと言われたことはないけれど……」
 人事担当者は調査票を返送。法律に触れる労働環境ではないと思う半面、「旧来の企業とは微妙に尺度がずれているのかも」と思う。当の三田労基署は「回答の内容次第ではさらに調査する」と、にらみを利かす。
 情報の海にいつでも飛び込むことができ、重要な情報をたぐり寄せては、止めどなく仕事にのめり込む。ネットはそんな魅力を秘める。頑張りが成功につながる世界は仕事と休みの境界を溶かし、「いつでもON」へ傾斜を強める。
 都内新宿区にあるベンチャーキャピタル、アイティーファーム。社員の向林隆(47)は「寝ている間も仕事が進み、起きたら何が待っているか楽しみで仕方がない」と屈託がない。
(平成18年6月16日付日本経済新聞朝刊から)

記事自体はこうした働き方には否定的なニュアンスで、後のほうには体調を崩した事例も出てきます。もちろん、際限のない長時間労働を強いられることはあってはいけませんし、働き過ぎによる健康被害の予防も必要でしょう。しかし、こうした分野まで現行の労働基準法によって一律に規制したり、さらに規制を強化することがはたしていいのかどうか。とりわけ、こうした分野はこれからの日本の豊かさ、成長を支えていくわけですし。もともとホワイトカラー労働は、とりわけ専門性や創造性が高くなればなるほど、仕事と休みの境界はあいまいになります。それに適応した新たな規制のあり方を考えていく必要があるように思います。