正社員雇用を義務付け?

昨日に続いて、日経新聞は今朝も労働政策審議会の話を記事にしています。内容的には昨日とほぼ同じで、労働時間規制の話とともに、非典型についても言及しています。

 派遣・パート社員の待遇改善も柱の一つ。雇用契約が1年以上経過するか、3回以上続けて更新する場合、本人が希望すれば正社員として雇うよう企業に義務付ける。
 企業にとっては正社員より低コストで労働力を確保でき、業績や事業計画に合わせて人員を柔軟に増減できる。だが厚労省は「契約終了後に仕事を失うリスクが高い。経済力の低さが重荷で結婚に二の足を踏む例が多い」と指摘。正社員化で経済基盤を安定させ、結婚しない若者を減らすことも視野に入れている。
(平成18年6月14日付日本経済新聞朝刊から)

これが現実論としていかにバカげているかは昨日のエントリで書きましたが……


ところが、きのうの審議会(労働条件分科会)に提出された「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」という資料を読んでみると、実際の記述はこうなっています。

 有期労働契約が更新されながら一定期間(例えば、1年)又は一定回数(例えば、3回程度)を超えて継続している場合において、労働者の請求があったときには、使用者は期間の定めのない契約の優先的な応募機会の付与を行わなければならないこととすることについて、検討する。

「使用者は期間の定めのない契約の優先的な応募機会の付与を行わなければならない」となっていますから、要するに応募機会を付与すればいいわけで、必ず「正社員として雇う」ことを「企業に義務付ける」わけではないでしょう。しかも、この文面を見る限りは、期間の定めのない契約を募集するときに優先的に機会を与える(具体的には一般募集より先に周知して試験を受けてもらえるようにするくらいのことでしょうが)ことで足りるように思われます。さすがに、厚生労働省は記事のようなバカなことは考えていないということでしょう。
ということは、日経新聞の「正社員として雇うよう企業に義務付ける」という報道は明らかに誤報のように思われるのですが、どうなのでしょうか。ざっと見た限りでは、主要全国紙には同様の記事は見当たらないようです。2日続けて同じ誤報を流すというのもずいぶん格好悪い話のように思えますが……。