分配と配分

このところ、春闘をめぐって「配分」に関する関心が高まっているようです。人事労務管理の実務家にとっては、自分の仕事に対する関心が高まっているということですから、まことに喜ばしい限りです。
経済学では「分配」というのは重要な用語、概念だろうと思いますが、賃金実務の理論では、「配分」というのは非常に重要なポイントです。ベースアップをいくらにするかとか、賞与の総額は組合員平均で何か月分かということは、当然団体交渉で決まりますし、世間の注目も大きいわけですが、その後のプロセスが「配分」です。
要するに、ベースアップの原資が組合員平均でいくらかと決まったとして、個々人にとってはそれで自分の賃金がいくら上がるかはまた別問題になります。もちろん、組合員平均いくら、というのを率に換算して、全員の賃金をそれだけ上げるという方法もあります(一応、これがスタンダードと考えられているようです)。それなら、年齢が上で賃金の多い人ほど、昇給の金額は大きいということになります。
いっぽう、組合員全員について同じ金額の昇給を行うという考え方もあります。そうなると、昇給額は同じでも、昇給率についてはもともとの賃金が高い人は(昇給率は)低く、もともとの賃金が低い人は相対的に賃金の改善の度合いは大きいということになります。
これが「配分」の違いです。すでに新聞報道などで伝えられているように、JFE労組は55歳以上の人に多くを「配分」することを求めていますし、日野自工も「係長クラス」の賃上げを求めるそうです。いっぽうで、若年層に比較的手厚い昇給の配分を求めている企業もあるようです。
いずれにしても、経済学用語の「分配」をひっくり返した「配分」への関心が高まることは、決して悪いことではないと思います。