組織率低下に歯止めかからず

本日の新聞報道によると、厚生労働省の「平成17年労働組合基礎調査」の結果、今年6月末時点の組織率は18.7%と、昨年比0.5パーセントポイントの大幅低下となったそうです。

 厚生労働省が14日発表した労働組合基礎調査によると、6月末時点での単一労働組合員数は前年比1.7%減の1013万8千人となり11年連続で減少した。労組の推定組織率は同0.5ポイント低下の18.7%と30年連続で低下した。
 単位労働組合数は61178で前年比2.6%の減少。組合員数は同1.7%減の13万4千人。…大企業から中小企業まですべての企業規模で組合員数は減った。
 パート労働者の組合員数は前年比7.3%増の38万9千人、全労働組合員に占める比率も同0.3ポイント増の3.9%になったが、パート労働者全体が増えたため、推定組織率は3.3%で前年と同じだった。
(平成17年12月15日付日経産業新聞から)


連合はこれに対しても事務局長談話を発表していますが、さすがに経団連批判のような元気はありません。談話による今回の結果の評価を要約すると、こんな感じでしょうか。

  • 労働組合数(単一組合)の減少数が前年比で1,041組合が解散するなど調査開始以来もっとも大きい。
  • 産業によってバラツキがある。
  • 短時間雇用者(パートタイム労働者等)が65万人増加し、全体の雇用者総数の増加分(45万人)を上回る。
  • 民間雇用労働者の52%が99人以下の企業規模で働いており、そこでの推定組織率は1.2%しかない。

談話はさらに、連合の活動には「多くの労働組合員の参加と支援が不可欠」であり、「労働組合は「数は力」、「力は数」でもある。あらためてその役割と存在が社会に問われている。」として、現状は「危機的」であるとの認識を示しています。
たしかに、労組、とりわけナショナルセンターは「数が力」という部分もあるでしょうし、組織率の回復は重大な課題であろうと思います。談話は次のようにその決意を表明しています。

連合は、先の大会でも組織拡大を最優先運動として位置づけた。現在「組合づくり・第3次アクションプラン21」にて組織拡大目標2年間(2005年10月〜2007年9月)の「600,000人+α」の達成し、組織率20%回復に取り組んでいる。特に、今回の調査結果で明らかなように、中小労働者・パート労働者等の組織化は、緊急の課題となっている。連合の掲げた組織拡大目標の達成に向けて、連合本部・構成組織・地方連合会一体となって取り組む決意である。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/new/iken/danwa/2005/20051214.html

まあ、中小・パートの組織化が重要だということもそのとおりだろうと思うのですが、「数は力」「力は数」ということで組織拡大に取り組むのであれば、これが効率的かどうかは疑問があります。
むしろ、単組の減少数が過去最大になった、ということを重視すべきなのではないでしょうか。これは要するに、労組のある企業が消えてゆき、労組のない企業が生まれている、ということでしょう(もちろん、労組のある企業同士の合併など、ほかの要因もあるでしょうが)。ということは、やはり労組のある企業を増やす、すなわち企業別組合の数を増やすことが効果的なのではないでしょうか。
もちろん、企業別組合を増やすとなると、経営者の理解を得ることが望ましいことは言うまでもなく、したがって、まずは経営者に対して「労組があると、こんなにいいことがありますよ」ということを知らせなければなりません。実際、経営にとってもメリットのある存在となっている企業別組合もたくさんあるのですから、それがモデルになるでしょう。とりわけ、労組のある会社が一部の事業を分社したときに、分割された新会社に組合ができないというケースはかなりあるのではないでしょうか。こうしたケースは、もちろん理由があってそうしているのでしょうが、しかし従来は労組があったのですから、経営者も従業員も理解はあるわけで、まったくの新設に較べれば少ない努力で再組織化は十分可能なのではないでしょうか。
これに対して、パートや中小労働者を一般労組に組織化するというのは、なかなか労多くして功少ない方法のような気がしてなりません。パートであれば、その企業に企業別労組があれば、そこに加入させる(組合員範囲を拡大させる)取り組みの方が、まとまった数の加入が期待でき、効率的ではないでしょうか。もちろん、中小労働者は企業別労組が望ましく、ここは取引先の単組やグループ労連の出番ということになるでしょう。
まあ、私がこんなことを言うのはまったく余計なお世話ですし、こうした考え方は問答無用で受け入れられない人も労組関係者には多いのでしょうが。