連合の変容

けさの産経新聞から。

 日本最大の労組中央組織、日本労働組合総連合会(連合)は1日、運動の中心に据えていた大企業、公務員の組合員の労働条件向上よりも、パートなど非正規労働者や零細企業労働者への支援を優先する方針を固めた。低賃金で働く非正規労働者らとの格差解消が狙い。秋の定期大会で新しい運動方針として提案し、了承される見通しだ。連合の運動方針は正社員労組中心の利益団体から、あらゆる形態の労働者と連帯する福祉型労働運動へ大転換することになる。
 連合幹部らが作成した運動方針の素案によると、これまでの非正規労働者や中小企業労働者への対応について「取り組みが労組全体のものとはなっていない。(労組の)組織化も一部にとどまり、中央組織としての存在意義が低下している」と総括。今後の運動方針の力点として初めて「非正規労働者や零細企業で働く労働者への支援・連携の強化、組織化に最優先で取り組み、労働条件の底上げを図る」と明記した。
 景気の拡大局面が続くなか、割安なパートを雇うことで人件費を抑制するという企業の基調は変わっていない。このため連合は昨年の春闘から、パートの処遇改善や賃上げを目指す共闘組織「パート共闘会議」を設置し、正社員労組と同様に賃上げを要求できる環境づくりを進めてきた。
 しかし、正社員と非正規労働者との時間当たりの賃金水準格差は開いたままで、「運動方針を抜本的に変えないと労働者間の格差が固定化してしまう」(連合幹部)との判断から方針転換を決めた。
 素案は1日、福岡市内で開かれた中央執行委員会で提示された。今後、議論を重ね傘下労組が出席する10月中旬の定期大会で提案されるが、正社員中心の労働運動を重視する産業別労組から異論が出ることも予想される。
(平成19年8月2日付産経新聞朝刊から)

これはたしかに驚くべきことかもしれません。相当の労力を費やして組合活動に参加し、組合費を支払っている組合員よりも、組合員以外への支援を優先させるというのですから。まあ、一応は「組織化」が方法論としても目的としてもうたわれているようですから、まるっきりフリーライドのサービスを提供するというボランティア活動になるわけではなさそうですが、そんなことなら連合を脱退するという産別や、連合への上納金はボイコットするという単組が出てきてもまったく不思議ではありません。
逆にいうと、これはある意味では一種の所得再分配ということなのかもしれません。比較的労働条件が高いと思われる大企業・正社員や公務員の組合員から集めた組合費を使って、比較的高くないと思われる非正社員、中小零細の労働者にサービスを提供するというわけですから。さらにいえば、実は春闘相場が中小にまで波及していた時期には、すでに中小の非組織労働者が連合傘下の労組の活動にフリーライドしていた構図が存在していたともいえるでしょう。そう考えれば、(非典型については必ずしもそうともいえないかもしれませんが)当時すでに連合は未組織労働者と連帯する(?)「福祉型労働運動」に事実上なっていたとも思えるわけで、だとすると今回の方針転換は方針転換ではなく、失われてしまった再分配機能を回復するだけのことかもしれません。
ただ、そこで「組合員より非組合員を優先する」と明言してしまうことの組織的な意味はかなり大きいはずです。はたしてこれでまとまりますかどうか、もちろん形としてはまとまるでしょうが、連合、執行部の求心力がどうなるのかはいささか心配なところではあります。余計なお世話ですけどね。