入社式トップ語録

 4月1日、企業各社で一斉に入社式が行われ、各社の経営トップがそれぞれ新入社員への期待を語りました。きのうの日経産業新聞日刊工業新聞は、「入社式トップ語録」と題してその一端を紹介しています。紹介人数は日刊工のほうがかなり多いのですが、そのうち5人の経営トップは両方で紹介されています。もちろん、全部を引用することは無理ですから、両紙が特にポイントと受け止めた部分を百数十字で紹介しているのですが、並べてみるとけっこう目のつけどころが違っていて興味深いものがあります。

(上段が日経産業、下段が日刊工です)
 
 新町敏行・日本航空(JAL)グループCEO(62) 経営について訴えたいことがあったら、私に何なりと言ってきてほしい。24時間、メールでも電話でもぶつけてほしい。
 【努力と挑戦に期待/日本航空・新町敏行社長】
 JALグループの安全に対する取り組みが厳しく問われている。「安全」なくしてグループビジョンの達成はない。航空業界を取り巻く現状は厳しいが、ピンチをチャンスにする気概で努力と挑戦を期待する。
 
 馬田一・JFEスチール社長(56) JFEグループの行動規範は「挑戦」「柔軟」「誠実」。特に若い皆さんには「挑戦」というスピリットを大事にしてほしい。失敗を恐れず色々なことに積極果敢にチャレンジしてほしい。皆さんがフレッシュな感性で会社に新風を吹き込んでくれることを期待している。
 【一流の人材に/JFEスチール・馬田一社長】
 新会社としてスタートして2年。自分たちの手で会社の新しい歴史を築くのだ、という気概で第一歩を踏み出してほしい。「会社人」「社会人」「個人」すべての立場で一流の人材を目指そう。
 
 岡村正・東芝社長(66) 社会人として高い倫理観と誇りを持ち、当社として世の中をどう変えていけるのかを考えて、仕事に反映してほしい。
 【探求心と情熱/東芝・岡村正社長】
 今年7月で創立130周年を迎える。これまで続々と世の中を変える製品を送り出してきた。創業者の“あくなき探求心と情熱”を継承し、東芝人として誇りを持って自ら社会を変えるとの気概で臨んでほしい。
 
 張富士夫トヨタ自動車社長(68) 韓国メーカーなど競合メーカーの品質向上はめざましく、トヨタのリードも少なくなっている。いったん気を抜けば企業としての存在すら危うくなる競争の中にいる。常に顧客の立場に立ち、チャレンジ精神を持って仕事をしてほしい。
 【変革に挑戦/トヨタ自動車張富士夫社長】
 「モノづくり、車作りを通じ、社会に貢献する」という精神で変革に挑戦してほしい。「常にお客様を念頭に置く」「チャレンジ精神を持つ」の2点を心がけ、トヨタというチームで知恵を結集し頑張ってほしい。
 
 藤洋作・関西電力社長(67) 昨年8月の美浜原発3号機の事故では11人の死傷者を出し、顧客や社会の信頼を大きく損なった。二度とこのような事故を起こさないという固い決意で安全の実績を積み上げていかなければならない。どの職場に配属されても「安全最優先」を深く胸に刻み、これからの業務にあたってもらいたい。
 【信頼回復が使命/関西電力・藤洋作社長】
 昨年の美浜発電所事故で損なわれた信頼の回復が、私たちの最も重要な課題。「お客様のお役に立つ」という使命を果たすために最善を尽くすとともに、自らの能力向上に努め、前向きにチャレンジしていただきたい。
 
(平成17年4月4日付日経産業新聞朝刊(上段)、同日付日刊工業新聞朝刊(下段)から)

較べて見ると、日刊工が比較的それぞれの講話のメイン・テーマを抽出している(ひょっとしたら、各社の広報が提供したものかもしれません?)のに対して、日経産業は記者が関心をひかれた部分を抜き出した、という感じがします。特に新町、馬田、岡村各氏の講話は、本当に同じ講話から取材したのか、というくらいに違っています。まあ、報道としてはどちらもありなのでしょうが、書かれた経営トップ各氏からみれば、言いたかったことをうまく伝えてほしいとの思いは当然あるでしょうね。
ぞれはそれとして、入社式の主役は社長ではなく新入社員ですから、フレッシュマン諸氏には今後大いに活躍されることを期待したいものです。