春闘、ヤマ場を越える

一昨日、金属労協各社の回答が出て、春闘も大きなヤマ場を越えました。今回は業績好調な企業も多く、経団連春闘の基本方針を示す「経営労働政策委員会報告」で「業績好調な企業は積極的に従業員に還元を」「個別企業労使の判断による賃上げを否定しない」といった見解を示していましたが、各社の回答をいると、賃上げはほぼ各社とも要求どおりの「賃金制度維持分」(定昇確保、ベアゼロ)、賞与は自動車各社で満額回答が連発されたのをはじめ、電機各社も昨年より増額という好調な回答となりました。業績連動賞与を採用している鉄鋼各社も業績好調をうけて高額な賞与が予想されています。
この結果をどうみるかですが、私は労組もよく取ったし、経営もよく出したと思います。マスコミなどでは、業績好調にもかかわらずベアゼロ決着になったことに不満を表明する意見が多いようですが、物価が下がる中でベアゼロであれば、実質ではベースアップを取れていると考えるべきです。しかも、ここ数年来、デフレが物価が下がる中でもベースダウンを回避してきたことを考えれば、ここで名目でベアを取りに行くよりは、経営サイドの主張に乗ったふりをして賞与をしっかり取ったほうが成果が大きいという判断は正しかったのではないでしょうか。
連合は、賃上げは安定的な労働条件向上につながり、退職金にもつながるということで、「賞与よりベア」との姿勢を示していますが、いっぽうで格差是正を掲げてもいることを考えれば、大手はベアゼロでもかまわないという見方もできるのではないでしょうか。水準に勝る大手がベアゼロで「待っている」間に、中小が多少なりとも格差を縮めるチャンスが出てくるはずです(そういう意味では、ベアゼロに不満を示すマスコミが、大手の高額賞与に対して「中小との格差が拡大する」と異論を述べるのはいささか筋違いでしょう)。実際、経営再建のために同業各社との賃金格差が拡大した日産自動車は、今年も事実上の定昇要求1,000円に満額回答しています(日産は賃金制度を変更して、公式見解としては「定昇」「ベア」という概念はなくなったのだそうですが、労組のいうところの「総原資の引き上げ」というのは、世間的には「ベア」以外の何物でもないでしょう)。
連合は今年も昨年に続いて「中小春闘」に取り組むそうですが、今年の春闘の真価はこれからなのかもしれません。