就活戦線本格化

春闘シーズンもヤマ場を超え、いよいよ就活シーズンを迎えますが、企業の採用マインドも今年はようやく旺盛さを取り戻したようです。

企業の採用意欲が本格的に回復してきた。日本経済新聞社がまとめた二〇〇六年度採用計画調査(一次集計)によると、製造業、非製造業ともに採用を大幅に増やす企業が多い。日本経済は踊り場に入ったとはいえ、景気の回復基調は変わらないことから、これまで抑制していた採用を拡大している。一方で、採用枠は拡大しても、よい人材でなくては採らないという「厳選採用」の姿勢はこれまでと変わっていない。

 ただ、イオンは前年度も計画では五百人を見込んでいたが、最終的には二百九十五人に絞り込むなど、欲しい人材を厳しく選ぶ面がある。二〇〇六年春に向けた採用がどうなるかは分からないが、採用枠が広がったからといって、一概に学生の就職が楽になるとは言えないだろう。
 上位の企業をみると、野村証券が前年度比四〇%増の七百人で六位に浮上したほか、大和証券グループが同二四%増の約六百人で十位に食い込んだ。みずほフィナンシャルグループが全体で採用を大幅に増やすほか、前年度実績がゼロのりそなグループも約五百人を採用する計画で、金融業界の急回復が目立つ。リストラが一段落し、業績回復にも自信を持ち始めたため、これまでの抑制姿勢から転換し、積極採用を始めた。
(平成17年3月17日付日本経済新聞朝刊・第2部から)

新卒採用が回復してきたということは、企業も先行きに自信を回復したということで、おおいに歓迎すべきことでしょう。まずはご同慶ではありますが…。
とはいえ、学生さんにはバブル期のような引く手あまたな状況はなかなか期待できないようです。雇用調整を一段落したとはいえ、バブル崩壊後の過剰雇用に苦しんだ経験は労使双方にまだまだ強く残っているでしょうから、底流としては慎重さがどうしても残るでしょうし、有期雇用などを一定割合で持ちたいとの考え方も変わらないでしょう。
くわえて、バブル期の大量採用世代がそろそろ管理職適齢期を迎えますから、それが人員構成上の大きな「団塊」になっている企業では、人事処遇に苦労しているケースも多いはずです。さらに、バブル期は「とにかく人手を揃えることが最優先」という採用が多分に行われており、当時「質には目をつぶって」採用した人材を(言葉は悪いですが)「お荷物」に感じている企業も多いでしょう。こうしたなかでは、数を揃えるよりは人材の質を優先したいとの「厳選採用」マインドは依然として強いのではないかと思われます。それにしても、採用計画500人の計画に対して実績が295人というのはいかがなものでしょう。これはさすがに虚偽の計画と云われても致し方ないのではないでしょうか。配当をいったん500円と発表しておいて、株主名簿をみてやっぱり295円にしておきます、というのは到底許されないと思うのですが・・・。
採用する企業の側としては、金融関係が採用を増やそうとしているのはなんといっても脅威だと思われます。経営さえ安定してしまえば、きれいでスマートで労働条件の高い金融業界はやはり学生さんには魅力があるでしょうし、金融工学やらITやらで理系も採用しますから、少なくともこれまで「敵失」に乗じてタナボタで人材確保できてきた企業は、今後苦戦を強いられるのではないでしょうか。