ビジネスガイド8月号

 (株)日本法令様から、『ビジネスガイド』8月号(通巻906号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 今号の特集は「改正育児・介護休業法&関係諸法令と実務」と「同一労働同一賃金&人事政策の視点で検討する手当の廃止・見直しの考え方」の二本立てで、7月号に続いて「コロナ」の文字がありません。もちろん記事にはワクチンの職域接種に関する解説などもあるわけですが、徐々に平常モードに近づきつつあるというところでしょうか。
 八代尚宏先生の連載「経済学で考える人事労務社会保険」は、前号までの流れを受けてサービス付き高齢者向け住宅の政策課題が取り上げられています。大内伸哉先生のロングラン連載「キーワードからみた労働法」では「同一労働同一賃金(part2)」ということで、近時の最高裁判決を踏まえた解説がされています。

JILPT資料

 (独)労働政策研究・研修機構様から、以下の資料をお送りいただきました。いつもありがとうございます。手違いで受け取りが遅れてしまい、ご紹介と御礼が非常に遅くなり申し訳ありません。

●調査シリーズ
No.209 派遣元事業所のキャリア形成支援と雇用安定措置 「派遣労働者の人事処遇制度とキャリア形成に関する調査」
https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/209.html

●資料シリーズ
No.238 現代ドイツ労働法令集II―集団的労使関係法、非正規雇用法、国際労働私法、家内労働法
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2021/238.html
No.237 変化するフリーターの意識と実態―新型コロナ感染症拡大の影響を視野に入れたインタビュー調査から―
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2021/237.html
No.236 若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状「平成30年若年者雇用実態調査」より
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2021/236.html

●労働政策研究報告書
No.210 長期雇用社会のゆくえ―脱工業化と未婚化の帰結
https://www.jil.go.jp/institute/reports/2021/0210.html
No.209 第四次産業革命と労働法政策―“労働4.0”をめぐるドイツ法の動向からみた日本法の課題
https://www.jil.go.jp/institute/reports/2021/0209.html
No.208 仕事と子どもの育成をめぐる格差問題
https://www.jil.go.jp/institute/reports/2021/0208.html

 例によってすべて機構のウェブサイトからお読みになれます。
 今回は山本陽大先生の手になるドイツ法関連の資料が2点あるのが目を引きます。『現代ドイツ労働法令集II』は、その名のとおり法令の日本語訳が収載されているのですが、ドイツ特有の事業所委員会などについて定めた「事業所組織法」はたいへん興味深く、法律なのに思わず読みふけってしまう面白さです。職業教育訓練生の代表や集会などについても定められているのはいかにもかの国らしい感じです。

田中淳子『事例で学ぶOJT』

 (一社)経団連事業サービスの輪島忍さんから、経団連出版の新刊、田中淳子『事例で学ぶOJTー先輩トレーナーが実践する効果的な育て方』をお送りいただきました。いつもありがとうございます。例によって在宅勤務続きでほとんど出社していないため、ご紹介・御礼が遅れることをご容赦ください。

 職場で新入社員や若手の指導にあたる先輩社員や直属上司のためのマニュアルという感じの本です。わが国では初任配属時のメンター・プロテージ関係がその後のキャリアにも長期的かつ大きな影響を与えるということは古くから示されていますので(最近も野村証券だかどこかの事例が話題になっていたと記憶)、こうした本はまだまだ活用の場がありそうです。

大内伸哉『労働法で企業に革新を』

 神戸大学大内伸哉先生から、ご著書『労働法で企業に革新を』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

 2016年の『労働法で人事に新風を』の続編ということで、主人公はじめ前作の登場人物も何人か引き続き登場します。
 前作は企業に残存している旧弊な人事管理を刷新し、近代化していくプロセスを通じて法の理念と内容を解説するという本でしたが、本作はフリーランスに始まっていわゆる「同一労働同一賃金」、分社化、さらには「ジョブ型」やテレワークといった比較的新しい、あるいは昨今の情勢下において流行りの人事施策の検討・導入のプロセスの中で法的論点が解説されています。テレワークのくだりで「ジョブディスクリプションを作りましょう」というのはかなり残念な感がありましたが、それを除けば、小説仕立てで読みやすく、解説もポイントがおさえられていて、この手の施策に取り組んでいる人事担当者の方には役立つ本ではないかと思います。
 最後の部分は未来予測で完全にSFなのでまあ課題というか問題意識としてという話でしょうからそう読めばいいのだろうと思いますが、ただまあこれまた前作と同様なのですが、ネタバレになるので詳しくは書きませんが本書の「オチ」もまたかなりブラックなもので、なんかこの主人公って半世紀前の(クラシックな意味での)労務屋(なのかオルグ屋なのか)が蘇ってきたんじゃないかなどと、思わなくもない。ストーリーとしては面白くていいのでしょうが、しかし人事担当者や社労士の職業倫理としてはどうなのかと思うなあ。
 あとこれは本当にどうでもいい感想ですがワインバーの店名が「アモール」なのはなぜなんだろう。大内先生といえば「アモーレ」というのが業界のコンセンサスだろうと思うのですが(笑)

仁田道夫・中村圭介・野川忍編『労働組合の基礎』

 UIゼンセン同盟副書記長の松井健さんから、仁田道夫・中村圭介・野川忍編『労働組合の基礎-働く人の未来をつくる』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

 UIゼンセンの機関誌『コンパス』の連載を元にまとめられたものとのことで、松井さんは共同執筆者の一人であると同時にこの連載の企画者であり、本書の仕掛け人という位置づけになるようです。社会学経営学、法学の各分野における日本の労使関係研究の編集のもと、労働運動の歴史と労組法の解説にはじまり、労組の組織・運営、共済活動、団体交渉と労使協議、賃金・労働時間から企業間格差是正に至る個別課題、政策制度から政治運動、国際連帯まで、労働組合の多岐にわたる活動範囲を網羅した、先端の専門家による活動家のための手引きという感じの本です。集団的労使関係・労働組合に期待する私としては、組合活動に関わる人だけでなく、それに向かい合う経営サイドの人事労務担当者にとっても、座右において参照してほしいと思います。

日本労働研究雑誌6月号

 (独)労働政策研究・研修機構様から、『日本労働研究雑誌』6月号(通巻731号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 今号の特集は「労働者を守る公的機関のいま」というもので、労働政策審議会に始まって最賃審議会、労基署、職安、労働審判、労働局、労委にいたるまで、労働関係のさまざまな機関の現状と課題がまとめられています。労政審については元会長の諏訪康夫先生が筆をとられ、「…審議会は、官邸サイドが主導する基本政策や上位の合議体(規制改革会議や経済財政諮問会議など)の方針に縛られ、その枠内において専門的・技術的な制度を作り上げていくための調整を行うという機能が顕著になっていく」と指摘され、今般の働き方改革においても「労政審はその具体化のための専門的下請け機関化する様相を呈した」とまで述べる一方、「官邸サイドで政労使合意に至ろうとするトップ調整の動きが出ていた」ことも指摘され、それによって時間外労働の上限規制などの積年の課題にこれまでにない一定の解決策が生まれたとも評価しておられます。その上で、これを「変動期にある政治傾向の反映」と捉え、「従来にない新たな状況や諸課題が生まれてきている」と締めくくっておられます。それ以上踏み込まれていないということは、言外に「政労使(公労使)三者構成による決定という原則は不変」との意思を示しておられるのではないかと私は読みました。
 続く各機関に関する論文も非常に興味深いものが多く、特に労働審判に関する浅野論文は特にしっかり勉強しなければならないと思っております。なお余計なことですが、まあ確かに労働政策の太宗は労働者保護をその趣旨としているわけではありますが、紛争処理機関まで「労働者を守る」と言い切られてしまうと(その重要な役割であることは否定しない)、若干の違和感は覚えるのでありました。まあ余計なことですが。

ビジネスガイド7月号

 (株)日本法令様から、『ビジネスガイド』7月号(通巻904号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 本号の特集は「令和3年度注目助成金」と「令和2年度重要労働裁判例」の2つで、表紙から「コロナ」の文字が消えました。人事管理が徐々に正常化しつつあることの反映でもありましょう。重要裁判例はジャパンビジネスラボ事件や福生病院企業団事件、名古屋自動車事件など今日的な問題が争われた事件が取り上げられて千葉大の皆川宏之がわかりやすく解説しておられ、実務家にはたいへん役立つものではないかと思われます。八代尚宏先生の連載「経済学で考える人事労務社会保障」は「高齢者住まい法とサービス向け高齢者向け住宅」を取り上げ、民間主導のビジネスモデルへの期待が解説されています。大内伸哉先生のロングラン連載「キーワードからみた労働法」は「派遣労働者の賃金」で、中でも今般のいわゆる「同一労働同一賃金」で新たに導入された派遣業の労使協定方式についてていねいに解説された上で、「より弾力的な賃金決定ができる方向への見直しが必要となる」と予想しておられます。