日本労働研究雑誌6月号

 (独)労働政策研究・研修機構様から、『日本労働研究雑誌』6月号(通巻731号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 今号の特集は「労働者を守る公的機関のいま」というもので、労働政策審議会に始まって最賃審議会、労基署、職安、労働審判、労働局、労委にいたるまで、労働関係のさまざまな機関の現状と課題がまとめられています。労政審については元会長の諏訪康夫先生が筆をとられ、「…審議会は、官邸サイドが主導する基本政策や上位の合議体(規制改革会議や経済財政諮問会議など)の方針に縛られ、その枠内において専門的・技術的な制度を作り上げていくための調整を行うという機能が顕著になっていく」と指摘され、今般の働き方改革においても「労政審はその具体化のための専門的下請け機関化する様相を呈した」とまで述べる一方、「官邸サイドで政労使合意に至ろうとするトップ調整の動きが出ていた」ことも指摘され、それによって時間外労働の上限規制などの積年の課題にこれまでにない一定の解決策が生まれたとも評価しておられます。その上で、これを「変動期にある政治傾向の反映」と捉え、「従来にない新たな状況や諸課題が生まれてきている」と締めくくっておられます。それ以上踏み込まれていないということは、言外に「政労使(公労使)三者構成による決定という原則は不変」との意思を示しておられるのではないかと私は読みました。
 続く各機関に関する論文も非常に興味深いものが多く、特に労働審判に関する浅野論文は特にしっかり勉強しなければならないと思っております。なお余計なことですが、まあ確かに労働政策の太宗は労働者保護をその趣旨としているわけではありますが、紛争処理機関まで「労働者を守る」と言い切られてしまうと(その重要な役割であることは否定しない)、若干の違和感は覚えるのでありました。まあ余計なことですが。