今年の十冊

さて年も明けてしまったわけではありますが(このエントリは平成25年1月4日に書いています)、毎年恒例のこれを最終日付で。かような次第で今年も簡単なコメントだけになりますがご容赦ください。例によって同一著者一冊、著者50音順で掲載順に意味はありません。なんだかんだ言ってやっぱり労働の本が多いなあ。

池田新介『自滅する選択』

自滅する選択―先延ばしで後悔しないための新しい経済学

自滅する選択―先延ばしで後悔しないための新しい経済学

経験的にはわかっていて、利用もされていることが経済学的にはこう説明できるのか、と面白く読めると思います。応用範囲も広そうです。

大内伸哉川口大司『法と経済で読みとく雇用の世界』

法と経済で読みとく雇用の世界 -- 働くことの不安と楽しみ

法と経済で読みとく雇用の世界 -- 働くことの不安と楽しみ

同一著者一冊ということで、大内先生の本はどれをとるかかなり迷いましたが、川口先生と共著のこちらにしました。労働における法と経済学の現時点における到達点というところでしょうか。

大竹文雄ほか『脳の中の経済学』

脳の中の経済学 (ディスカヴァー携書)

脳の中の経済学 (ディスカヴァー携書)

年末に出た本ですが見かけて即購入して一気読みしました。きわめてスリリングな先端分野の解説書。お台場のサイエンスアゴラ、行きたかったなあ。

小池和男『高品質日本の起源』

高品質日本の起源―発言する職場はこうして生まれた

高品質日本の起源―発言する職場はこうして生まれた

日経経済文化図書賞受賞おめでとうございます。小池先生の衰えぬ意欲には感嘆するばかりです。

佐藤博樹『人材活用進化論』

人材活用進化論

人材活用進化論

多様な側面からわが国の近年の人事管理・労働市場を描きあげています。佐藤先生はどうしてこんなに調査ができるのだろう。

武石恵美子『国際比較の視点から日本のワーク・ライフ・バランスを考える』

海外事例は面白く読んだので採りましたが、インプリケーションはややないものねだりというか。企業の意識も職場の意識も変わるべきとは思いますが、人々の意識が変わらないかぎりどうにもならないかと。

田中直毅ほか『政権交代はなぜダメだったのか』

政権交代はなぜダメだったのか―甦る構造改革

政権交代はなぜダメだったのか―甦る構造改革

当面のトピックとなっている個別政策についてたいへん勉強になりました。刺激的な書名とは裏腹に硬派な政策論の本です。

濱口桂一郎『日本の雇用終了』

日本の雇用終了―労働局あっせん事例から (JILPT第2期プロジェクト研究シリーズ)

日本の雇用終了―労働局あっせん事例から (JILPT第2期プロジェクト研究シリーズ)

わが国労働市場の相当を占める中小企業の現場における解雇や契約打ち切り、その補償などの実態を紹介して話題になりました。神は細部に宿るといいますが、まさにそうした印象の本です。

藤本真ほか『中小企業における人材育成・能力開発』

中小企業における人材育成・能力開発 (JILPT第2期プロジェクト研究シリーズ)

中小企業における人材育成・能力開発 (JILPT第2期プロジェクト研究シリーズ)

藤本先生のたいへんな労作。課題とともに中小企業の人材育成力、それを支える業界団体の役割といったものが確認できます。これまた神は細部にという本で、ブラック企業云々も結構ですが中小企業のこうした側面にも注目が必要でしょう。

松浦民恵『営業職の人材マネジメント』

営業職の人材マネジメント

営業職の人材マネジメント

ていねいなヒヤリングにアンケートを組み合わせ、営業職の人事管理が臨場感をもって描き出されています。おもわず読みふけってしまいました。
あと番外として、どちらをとるか迷った大内先生の本を。

大内伸哉『労働の正義を考えよう』

労働の正義を考えよう--労働法判例からみえるもの

労働の正義を考えよう--労働法判例からみえるもの

業界でなにかと話題を呼んだ本ですが、虚心に読めば思索の材料を非常に多く含んだ本であり、労働法の入門書としても案外好適なのではないかと思います。正直私も異論が多々ありますが、いかに論破するかというとなかなか難しいものがあります。