(一社)経団連事業サービスの讃井暢子さんから、経団連出版の最新刊を2冊、経団連事業サービス人事賃金センター『本気の「脱年功」人事賃金制度−職務給・役割給・職能給の再構築』と、丹下一男『担当者必携障害者雇用入門−雇用のプロセスから法的構成まで』をお送りいただきました。いつもありがとうございます。
経団連事業サービス人事賃金センター『本気の「脱年功」人事賃金制度−職務給・役割給・職能給の再構築』
人事の現場を離れて久しい私には相当に懐かしさを覚える内容でしたが、それにしても脱年功とはかくも難しいかと思わせる本でもありました。本書18ページには「企業各社は現在、職務や成果にもとづく処遇制度への転換に本気で取り組みつつある」との記載があるのですが、「
成果主義」が大流行したのは1990年代後半以降であってすでに20年前であり、また本書第3章では今後の方向性として「多立型賃金体系」があげられていますが、日経連がこれを提起したのはたしか
経団連との統合を目前に控えた2002年の報告書「
成果主義時代の賃金システムのあり方−多立型賃金体系に向けて」だと思いますので15年前の話です。もちろんこの間も、この本でも多くの事例や実例が引かれているように各労使でさまざまな取り組みは進められており、決して本気でなかったということもないだろうと思うのですが、しかしこういう本が出るということはやはりはかばかしい結果は出ていないということなのでしょう。
正直なところ私は職務分析にはやや懐疑的なのですが、もちろんこれは各労使の選択の問題でしょう。いっぽうで昨今多様な正社員とかジョブ型正社員といった話も出ているわけで、案外こちらの分野で職務分析の利用が進む可能性はあるようにも思われ、その点ではいろいろと考える材料にはなりそうです。
丹下一男『担当者必携障害者雇用入門−雇用のプロセスから法的構成まで』
まず障害者とその雇用をめぐる歴史と哲学、続いて雇用に限らない障害者関連法の歴史と全体像を述べ、さらに
障害者雇用促進法の歴史を概観されます。ここまでで本文の三分の一以上が費やされています。その後に現行法規と就労支援諸制度の解説があり、これが本文の半分程度。残りは一応企業での実務の話ですが大半は抽象的な話にとどまっています。ということで企業の
障害者雇用担当者にとっては自分の仕事の歴史や社会的意義を知り、誇りを持って働くという点では有用な本であり、実務マニュアル的な要素はあまりありません。まあ確かに障害者(に限らないが)の雇用管理のさまざまな困難を負担するのは人事担当者というよりは配置された現場の
管理監督者や同僚たちなので、この本が想定する読者(必携であるところの「担当者」)を念頭におけばこういう本になるのかもしれません。