井上智洋『人工知能と経済の未来』/日本財団子どもの貧困対策チーム『子どもの貧困が日本を滅ぼす』

文藝春秋の高木知未さんから文春文庫の2冊、井上智洋『人工知能と経済の未来−2030年雇用大崩壊』と、日本財団子どもの貧困対策チーム『徹底調査子どもの貧困が日本を滅ぼす−社会的損失40兆円の衝撃』をお送りいただきました。ありがとうございます

井上著は、このところ注目を集めている人工知能と職業・雇用をめぐるもので、AIの解説と今後の技術見通し、その雇用や社会に与える影響、AI技術を受容した場合としなかった場合のシナリオなどが論じられています。著者の見立ては、汎用AI技術が発展すればそれを受容した社会では9割の人の仕事はなくなるが、生産性が急上昇するのでベーシック・インカムのような社会保障制度を充実すれば働かなくても生きられる社会になるというものです。
日本財団…著の実質的な著者は花岡隼人さんと小林庸平さんです。これまた近年問題視されているわが国の子供の貧困について実情をデータで解説し、その社会的損失の資産を提示しています。さらに個別具体の事例を紹介したうえで、必要とされる対策や日本財団などの取り組みについて述べられています。
井上著には編集者への謝辞がないので断言はできないのですが、おそらく2冊とも高木さんの編集になるものと思われます。どちらも新たな重要テーマに正面から向き合った時宜を得た出版と思います。いっぽうで2冊を並べてみると、子どもの貧困対策は足下ではもちろん重大な問題で喫緊の課題ではありますが、汎用AIが活用されるようになれば子どもの貧困対策も不要になる、というか貧困自体がなくなるという話でもあり、なんとなく不思議な感じがしなくもありません。まああくまでも「感じ」であってうまく説明できないのですが…。