昨朝のNHKニュース「おはよう日本」で資生堂の時短勤務が取り上げられてなにやら一部で炎上しているようです。放送内容はNHKのサイトに掲載されていますね。
http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2015/11/1109.html
わりと早く消えちゃうらしいので転載しておきましょう。
阿部
「女性の働き方についてです。
現在、多くの企業が出産後に職場復帰した女性社員を支援する制度を導入しています。
育児休暇や短時間勤務などをいち早く導入してきたのが、大手化粧品メーカーの資生堂でした。」
和久田
「ところが資生堂は去年(2014年)4月、こうした制度について大きな方針転換を打ち出しました。
子育て中の女性社員にも平等なシフトやノルマを与えるものです。
その内容に、世間では“資生堂ショック”ともいわれています。」
全国のデパートやスーパーなどに入っている、資生堂の化粧品売り場です。
一番のかき入れ時は、仕事帰りの客などでにぎわう午後5時以降と、土曜日と日曜日。
その売り場を任されているのが、全国に1万人いる「美容部員」と呼ばれる女性社員です。
1人あたりの営業ノルマは1日18人以上を接客すること。
資生堂では、より多くの客と接点を持つことが売り上げにつながると考えているからです。
美容部員の勤務体系はおおむね2種類。
10時から午後6時45分まで働く「早番」と、11時15分から午後8時まで働く「遅番」があります。
「短時間勤務制度」は、早番の終わりの時間を最大2時間短縮できるものです。
その時間を子育てに当ててもらいます。
この制度を利用している木内枝里佳さんです。
入社14年目に長男を出産し、去年11月に職場復帰しました。
美容部員 木内枝里佳さん
「(資生堂は)女性に対して優しい会社というイメージがあった。」
木内さんのように短時間勤務を利用している美容部員は、現在、およそ1,100人います。
これまで会社は、女性社員が働きやすい環境作りに力を注いできました。
短時間勤務制度は1991年に導入しましたが、店頭に立つ美容部員はなかなか利用しませんでした。
2007年、当時の社長が美容部員にも制度の利用を勧めたところ、利用者は一気に増えました。
ところが、同じ時期、会社全体で国内の売り上げがおよそ1,000億円減少します。
会社では、競争の激化やインターネット販売への対応が遅れたなど、さまざまな要因がある中で、美容部員がかき入れ時に店頭にいないことも原因の1つと考えるようになりました。
資生堂ジャパン 営業統括部 新岡浩三営業部長
「過去の習慣的に、育児時間(短時間勤務)取得者は早番、暗黙のルールがあった。いちばん忙しい時間に1人足りないということが発生していた。そういう時間にいないことが(販売の)機会喪失につながっていたのではないか。そこについては悩んでいた。」
販売の現場では、子育てをしていない美容部員に遅番・土日勤務の負担が集中。
こうした社員からは「不公平だ」「プライベートの時間がない」などの声が 続出するようになりました。
経営陣は制度運用の見直しを迫られたのです。
そして一昨年(2013年)、資生堂の人事部は子育て中の美容部員に、あるDVDを配布しました。
冒頭、役員が制度に甘えるなと警告しました。
資生堂が制作したビデオ
“月日を重ねるごとに、何となく(育児時間=短時間勤務)を取るのが当たり前、甘えが出てきたりだとか、そこを取るという権利だけ主張しちゃったり。”
さらに、短時間勤務の利用者でも公平に土日勤務や遅番をこなしてほしいという厳しい内容も伝えられました。
資生堂が制作したビデオ
“ひとつきの土日8日のうち2日は勤務することを基本とし、また、遅番10日を基本とし、会社が決定します。”
資生堂 人事部 ビジネスパートナー室 本多由紀室長
「育児期の社員は常に支えられる側で、本人たちのキャリアアップも図れない。なんとか会社を支える側に回ってもらいたいという強い思いがあった。働くことに対する意識、ここに対してメスを入れていこう。」
美容部員の木内さんは、職場復帰の前にこのDVDを受け取りました。
「短時間勤務で子育て」というプランが揺らぐことになったのです。
美容部員 木内枝里佳さん
「正直『え!?』と思った。本当にこれで大丈夫かという不安は大きかった。」
木内さんは復帰後、短時間勤務を利用しながら月3回の遅番と4回の土日勤務をこなすことになりました。
また、営業ノルマは1日18人の接客を行うこと。
これはフルタイムの場合と同じです。
会社側は改革を実現するため、夫や家族の協力は得られるかなどを聞き取ってシフトを決めることにしました。
木内さんの場合、夫や親に協力してもらい、遅番や土日勤務をこなしてもらうことにしました。
協力者がいない場合はベビーシッターの補助を出すほか、地域の子育てサービスを活用するようアドバイスしています。
資生堂ジャパン 営業統括部 新岡浩三営業部長
「月に3回遅番をやってもらったり、土日も半分勤務をしてもらってるけど、お子さん大丈夫でしたか?」
美容部員 木内枝里佳さん
「うちの場合は主人が比較的協力的で、子どもに関しては今のところ大丈夫。」
午後8時。
この日遅番勤務だった木内さんは閉店まで働きました。
帰宅すると、迎えてくれたのは夫の昌志さんと息子の想士くん。
この日は夫が先に帰って、保育園のお迎えに行ってくれていました。
木内さんは、ノルマを果たしながら子育てをすることで自分のキャリアアップも考えるようになりました。
美容部員 木内枝里佳さん
「時短者だから無理、やる気がない、そうは思われたくはない。今後はひとつ上のステップで、店を統括できるチーフ、マネージャーの立場を目指せればと思う。」資生堂は今回の改革によって、育児中の女性社員も会社の戦力にしていきたいと考えています。
資生堂 人事部 ビジネスパートナー室 本多由紀室長
「育児時間(短時間勤務)を取っている人は悪い評価でも文句を言えないから我慢してもらおうではなく、ちゃんとそこは客観的に評価をしていく。厳しい部分はあったかもしれないが、会社も社員もどちらも成長していく、意義のある大事な取り組み。」
和久田
「一見厳しい改革のようですが、子育て中の社員の生産性を上げることで会社の業績アップにつなげようということなんですね。」
阿部
「現在、多くの企業が子育て支援制度を導入していますが、運用を進めていく中で、職場では不公平感が広がり、現場の士気が下がってしまうこともあるといいます。専門家は今後、多くの企業が資生堂と同じような問題に直面すると指摘しています。」
企業の人事に詳しい 法政大学経営学部 佐野嘉秀教授
「企業としては、短時間勤務社員の働き方に配慮しつつも、通常社員の働き方に負担が生じないよう、社員の間で負担の平等化、公平化を図ることが必要。長く働く人はその分、貢献度が高いということで賃金に反映させるにとどめるのか、それともより長期的に昇格や昇進など、どこまで反映させるかを明確に示すことが、働く人の公平性、不満を和らげることにつながると思う。」
和久田
「職場の不公平感をなくすことで、お互い助け合おうという意識がより強くなるのかもしれませんね。
企業側も、制度の運用をより柔軟にすることで会社の業績アップと子育て支援のバランスをうまくとっていくことが大事になってきますよね。」
http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2015/11/1109.html
この話自体は番組にもあるように2013年には社内展開され2014年から実施されているわけで、なにをいまさら「ショック」などと仰々しく報じるのかなあと不審に思いつつ見ていたわけですが、用語は別として制度変更から時間が経過して今どうなっているのかを報じることはたいへん意味のあることだろうと思います。
さてこの話、実は日経新聞が今年の6月に例の働きかた特集の女性シリーズで似たような記事を掲載しています。
…14年春から1万人の美容部員(BC)を対象に育児中でも夜間までの遅番や土日勤務に入ってもらうという。20年以上前から育児休業や短時間勤務制度を導入し「女性に優しい会社」の評判を築いてきた資生堂。なぜここにきて厳しい態度に転じたのか。
…育児中で短時間勤務のBCは午後5時ごろ帰宅する。客でごった返す夕方から夜など繁忙時間は、若手やベテランが肩代わりしてきた。いつしかBCの時短勤務者は1200人に増え、「このままでは回らない」と通常勤務の社員から悲鳴が上がり始めた。充実したはずの制度が逆に士気後退につながる――。その危機感が資生堂を「優しさの次」へと向かわせた。
改革から1年余り。子供を持ち都内の化粧品店で働く広嶋由紀子(40、写真右)は、土日や遅番にも意識的に入る。その方が周囲の協力が得やすいからだ。実家の協力を得て遅番に入るようになった百崎も「販売増に貢献できる」と前向きだ。
もちろん、すべての社員が納得したわけではない。「リストラ宣告だとぼうぜんとした」と会社を去ったBCもいる。…「育児中の人にはプロ意識が、他の社員は配慮や協力の意識が増した」と分析する。
…「管理職試験を受けてほしい」。14年秋、産休中だった資生堂グローバル事業本部の長谷直子(38)は上司の言葉に驚いた。長男はまだ生後1カ月。悩んだが「子供を産んでもキャリアに傷は付かないと後輩に示せたら」と勉強を開始。今春管理職として復帰した。
…女性の意識も様々だ。上を目指す女性も多い半面、「子供を抱え責任の重い管理職は難しい」(40代総合職女性)、「普通の時間に帰りたい」(20代同)との声も少なくない。同社は女性のロールモデルも1つに限定せず、幅広い働き方を選んでもらう考えだ。
(平成27年6月27日付日本経済新聞朝刊から)
さらに先だって日経ビジネスオンラインではさらに詳しい記事も掲載されていました(http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150528/281748/)。そして続けてこれを読んだ(かどうか知らないが)AERAがこれを「働く女性に「資生堂ショック」女性は保護の対象から戦力へ」と題して記事化していたようで(http://dot.asahi.com/aera/2015080400001.html)、この記事とともに「資生堂ショック」が一部に拡散し、それをみてNHKが「世間では“資生堂ショック”ともいわれています」と報じたわけですね。しかしまあアエラの「会社にぶら下がって働ける時代は終わった――。働く女性たちに、それを実感させた」という言い分はなんでしょうね。これまでの働く女性たちは会社にぶら下がっていたと言いたいのかしら。
それはそれとしてカストリ雑誌(失礼)に較べるとさすがにNHKテレビの影響力というのはやはりすごいもののようで、放映されるや否や「資生堂ショック」がウェブ上でもリアル社会でも一気に拡散し、どうやらあちらこちらで火の手があがっているようですな。
ただまあ炎上の内容を見てみると脊髄反射的な反発が多いようで、なんであれ労働者の権利が後退することは許せないという人たちが一定数いるのはいつものことですが、前後の文脈を見ずに「甘え」「権利だけ主張」という言葉だけを見て反発している例というのもかなりあるようです。中には「育休は甘えというDVD」を見せられたとか書いている人も複数いて、しかし上で紹介したソースを見るかぎりさすがに「育休は甘え」と言っているとは思えないので、まあ伝言ゲームなんだろうなあという感じです。もっとも私もこのDVDの全編を見ているわけではないので、実際に育休は甘えとか言っている可能性は否定できません。いやウェブ上のどこかに動画が転がっていないかとあれこれ探してみたのですが発見できず、誰かYouTubeとかに上げてくれないものかしらなどと思っているのですがさすがにダメかなあ。
「育児中の人が時短勤務をしても繁忙時に不足をきたさないよう人員配置を増やすべき」という人もいて、もちろんそういう考え方もあるとは思いますが、しかしそれで増加した人件費はどこかで吸収する必要があるわけで(減収減益傾向であればなおさら)、結局は美容部員の賃金が上がりにくくなるとかいう話になるでしょう。また、そもそも美容部員としての専門性がありかつ夕方から夜の忙しい時間帯だけ働いてくれる都合のいい人というのもそうそう集まらないでしょうから、結局は閑散時には明らかに人余り状態になるものと思われます。それで賃金が上がりにくくなるというのでは時短勤務の人もふくめて現場の納得はなかなか得にくいのではないでしょうか。
「本当に業績悪化は美容部員のせいなのか」という声もあり、これはたしかに業界でも商品開発やマーケティングの失敗を指摘する意見があるようなので、あるいはそちらの問題のほうが大きいのかもしれません(私にはよくわかりません)。ただ百貨店などの化粧品販売の現場をみれば同業が軒を並べているわけで繁忙時の人手不足が顧客流出につながるだろうことも容易に想像でき、他により大きな問題があるから比較的小さな問題には手をつけなくていいという話にはならなかろうとも思います。
「子育て中の時短勤務者にもフルタイムと同じノルマなんて!」という意見もあり、もちろん製造業の生産目標数とかであれば時間比例でなければおかしいというのは正論です。一方でこれは実態がどうなのかわかりませんし、私に接客を受けた経験があるわけでもない(笑)のでなんとも言えないのですが、労働時間を短縮するために労使で生産性を上げましょうというのは労働界では比較的一般的な考え方であるということは言えると思います(労働サイドには否定的な意見もまだ相当あるようですが)。美容部員の接客時間というのがどのくらいなのかもわからない(ブランドによっても違うとの声あり)のですが、フルタイム勤務なら8時間で18人なら単純に割り算して一人あたり27分弱、最大時短勤務の6時間だと同20分。接客以外にも陳列などの仕事があるでしょうし、接客といっても「○○はどこにありますか?」「こちらにございます、ご案内しましょう」くらいの短いものもあるでしょうから(長いのもありそうだが)、まあ現場ではそれほど抵抗はないんじゃないかなあとあまり根拠のない憶測をめぐらす私。ちなみにこれについても「育休中にもノルマ!」と憤っている人がいてやはり伝言ゲームなのでしょうが、しかしなんかおかしいぞと思わなかったのかね。
「時短早番勤務を選択してもきちんとキャリア形成できるようにすべき」という批判には実は私もかなり同感するところがあり、労働時間・時間帯にかかわらず接客数が同じであれば少なくとも接客に関する経験や技能は同じように蓄積していくだろうと思うからです。であれば時短勤務だからとキャリアを別扱いするのもおかしいでしょう(もちろん時短勤務者に対する合理的な配慮も望まれると思います)。ただ上記日経ビジネスオンラインの記事には「ステップアップのためには、繁忙期に店頭に立つことが必要」との記載があり、どうやら夕方から夜の時間帯に働くことには特別の意味があるようです。たしかにノルマは同じでも実際の接客数はやはりフルタイムの方が多いとか、同じ時短勤務でも繁忙時に勤務するとノルマを上回って接客することが多くなるとかいう話はあるのかもしれません。それでもなお同様にキャリア形成させるべきだとの意見もあり得ますが後述します。
あと「資生堂は女性に優しい企業と思っていたのに失望した、もう買わない」という意見もかなりあり、まあたしかにそれを売りにしてきた企業であることも間違いないのでしょうから裏切られたような気分になることもわからなくはありません。ただ女性の側のニーズも多様であり、キャリアを継続し向上させたいと考えている美容部員にとっては遅番勤務のときのベビーシッター代を補助してくれる(不思議とここをお忘れになっている方が多いように見受けます)ほうが優しいと感じるかもしれません。さらに、日経ビジネスオンラインの記事を読むと、土日勤務2日も遅番10日もノルマ18人もそれほど厳格なものではなく、むしろ現場の裁量と判断で相当に柔軟に運用しているように思われるわけで、まあ人事管理というのはそういうものではあります。現実には資生堂は日経ウーマンの「女性が活躍する企業」ランキングでこの間2014年、2015年と2年連続で堂々の第1位に輝くなど、総合的にみて依然として最も女性に優しい企業のひとつであることは間違いありません。いや皆様女性への優しさを購買行動の判断基準にして、それで資生堂がアウトだということになると、買えるものはほとんどなくなってしまいますよ…?いやあれかな、こと化粧品については他にも候補はありそうかな。
ということで資生堂ショックをめぐる炎上は大半が的外れだなあと思うわけですが、では貴様はどう思うんだと言われれば、おはよう日本に応えた佐野先生のコメントに尽きると思います。再掲。
企業の人事に詳しい 法政大学経営学部 佐野嘉秀教授
「企業としては、短時間勤務社員の働き方に配慮しつつも、通常社員の働き方に負担が生じないよう、社員の間で負担の平等化、公平化を図ることが必要。長く働く人はその分、貢献度が高いということで賃金に反映させるにとどめるのか、それともより長期的に昇格や昇進など、どこまで反映させるかを明確に示すことが、働く人の公平性、不満を和らげることにつながると思う。」
http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2015/11/1109.html
おや佐野先生はいつのまにか教授になられたのだな。さてご指摘のとおりで、カネで解決する方法もあるだろうとは私も思いました。遅番勤務は早番に較べて賃金を高くし、週末の勤務も(たぶんすでに割増されていると思いますがさらに)割増すれば、「私たち遅番ばかり」という不満や不公平感はかなり緩和されるのではないかと思います。
それをあえてやらなかったのは、上でも書いたように本当はキャリア形成を考えて遅番勤務にも入りたいのに育児の事情でできませんという人にとっては解決にならないというだけにとどまらず、より広く、企業にとっても、さらに多くの美容部員にとっても、賃金以上にキャリア形成が大切だということなのではないでしょうか。
逆にいえば(佐野先生ご指摘の「貢献度」も主としてそうした「成長を通じた貢献」という趣旨ではないかと思うのですが)、労働時間や勤務時間帯の制約ゆえに能力開発の機会が限定され、結果的に経験や技能の蓄積が比較的少なかった人については、それをキャリアにも反映させることが公平だと資生堂の労使間では考えられている、ということではないかと思いますし、そうした制約を軽減し克服するための合理的な配慮としてベビーシッター代の補助といったものがあるのでしょう。もちろん、長時間働けることそれ自体についても働けない人に較べて価値があるという考え方もありますが、少なくとも育児期に限った話であれば、経験や技能の蓄積度合に較べればキャリア形成上はそれほど重視されていないのではないかと思います。
いつも書いていることですが、やはり何かを得るためには何かを諦めるという判断をしなければならないのがキャリアデザインというものだろうと思います。もちろん、中にはすべてを得ようとして得てしまう人というのもいるわけですがやはり例外でしょう。相対的に能力や技能の蓄積が遅れていてもその理由が育児であれば同等のキャリアとすべきだ、という意見は、おそらく労使双方にとってなかなか受け入れにくいものではないかと思います。
ちょっと変な見方かもしれませんが、資生堂が女性に優しい施策を導入するということは、(育児関連の施策などでは特に)女性の配偶者である(多くの場合)男性にも優しい施策を実施している、ということでもあるでしょう。つまり、従来は、妻である資生堂の美容部員が時短勤務と早番勤務の両方を利用することで、その夫は育児の負担を免れてきたということです。それが今回の見直しで、番組でも紹介されていたように夫の協力が必要になり、その負担を負うようになった。これまでは夫のキャリアのために妻が時短・早番勤務でキャリアを犠牲にしてきたのに対して、見直し後は妻のキャリアに可能性が出てきた分、夫のキャリアには育児協力にともなう影響があるだろうと思われます。まあよく言われる話ですがキャリアデザインは個人だけではなく家族の問題でもあるわけです。
さて、夫が育児負担をするようになるということは、これは当然夫のキャリアにとどまらず、夫の勤務先の人事管理などにも影響してくるだろうと思われます(小規模企業ではかなりの影響でしょうし、大企業でも職場レベルではやはり相当影響があるでしょう)。そう考えると、女性に優しい施策を導入するということは、その配偶者の勤務先のコストを肩代わりしているということでもあるということはできないでしょうか。もちろんそんなケチなことを言うなとは言われそうですし、それを上回るメリットがあるのだという話だろうとも思うのですが、すこし考えてみたい論点のような気はします。
ということで最後はかなり脱線しましたが、資生堂さんには今回の大方は的外れな炎上に屈することなく(屈しないと思いますが)、ぜひとも引き続き女性が活躍する・働きやすい企業に向けた施策を推進し、ランキング1位を3連覇、4連覇と伸ばしていかれることを期待したいと思います。