配慮は要らない

富山で山籠もりをしておりました。このところ他の市でも感じることが多いのですが富山市が広いのにも驚いた。ちなみに県庁所在地の中では静岡市に次いで2位の広さだそうです。
さてこの間もパリで大規模なテロが発生するなど世間ではいろいろなことが起きているわけですが、その中で河野太郎行革担当相のブログが目を惹きましたので、一部資生堂ショックのフォローも兼ねてご紹介したいと思います。エントリのタイトルは表題の「配慮は要らない」。

 国家公務員制度担当大臣として、霞が関で働く女性職員有志の皆さんとお昼を食べながら意見交換しました。
 彼女たちのメッセージはシンプルかつ強烈でした。
 女性職員への配慮は要らない、霞が関の働き方を変えてほしい。
 霞が関で働く女性は増え続けています。
 そして彼女たちはどんどんと重要なポジションについて仕事をするようになっています。
 今や、霞が関の新卒採用の三割は女性です。
 霞が関における女性人口が一割程度のうちは、家庭と仕事を両立させようと頑張る女性に、ポストをはじめ、さまざまな配慮をすることができました。
 しかし、女性人口が三割になると、子育てをする女性をなるべく定時で帰れるポストにつけようとしても、それだけの数のポストがありません。
 霞が関で子育てとキャリアを両立させようとしている女性を助けるために周りの男性が余計に頑張ると、民間でフルタイムで働いている彼らの奥さんたちにシワ寄せが来ることになります。
 霞が関で働く女性をなるべく早く帰宅させるために、男性職員が遅くまで残業して頑張ると、民間で働く彼らの奥さんが子育てのために毎日早く家に帰らなければならなくなり、フルタイムでの仕事を続けることが難しくなって仕事を辞めたという話を聞くことが多くなると、霞が関で働いている女性は、それは申し訳ないという気持ちになります。
 女性に配慮すれば何とかなるという時代は霞が関でも終わりつつあるのです。
 霞が関における働き方を、価値観とともに根本から変えなければ問題は解決しない時代になっているのです。
 そのためには霞が関の価値観を変えるとともに、霞が関が接している周りの世の中も変わらなければなりません。
 霞が関だけでは変わることができないのです。
 とりあえず、彼女たちが何とか仕事を持ち帰ってテレワークで、と思っても、各省ごとにテレワークのルールが違うのが霞が関の現状です。
 それだけではありません。
 有志の女性の過半数は旧姓使用でした。霞が関でも旧姓使用する女性が増えているようですが、公務員が仕事で外国に行くための公用旅券は旧姓では取得することができません。
 当然に旧姓では飛行機にも乗れません。
 旧姓で仕事をしている民間の女性から伺った話ですが、旧姓では銀行口座も開けないので、振り込みをしてもらう時にとても困ります。
 来年の四月から霞が関でもフレックスタイムができるようにしたいと思っています。
 私はジョージタウン大学を卒業して、富士ゼロックスに入社しました。
 その時に、埼玉県志木市で行われた日本で初めてのサテライトオフィスの実験の現場責任者でした。
 また、ワークステーションで自宅と会社を繋いでテレワークをやったり、仲間と一緒に当時の小林陽太郎社長にフレックスタイムの導入を直訴したりしました。
 9600bpsのモデムが100万円を切った頃の話です。
 今やフレックスタイムもテレワークも珍しくなくなりました。
 世の中も大きく変わりました。霞が関も変わり頃です。
https://www.taro.org/2015/11/%E9%85%8D%E6%85%AE%E3%81%AF%E8%A6%81%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84.php

これに関しては以前も紹介しましたが(http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20150130#p1)昨年6月に霞が関で働く女性有志(女性職員管理養成研修 (人事院主催 )第1期生有志 )による提言(http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/teigen1.pdf)が発表されており、今回の意見交換もこのフォローアップだったものと思われます。
そこで例によって細かい話からで申し訳ないのですが記述の正確性にはもう少し配慮してほしいと思うところはあり、たとえば、人事院平成26年度年次報告書(http://www.jinji.go.jp/hakusho/h26/1-3-01-3-4.html)をみると平成27年度の総合職事務系区分の内定者に占める女性の割合は38.8%に達し、前年度の採用者に占める女性の割合28.6%から飛躍的に急伸しているので「今や、霞が関の新卒採用の三割は女性です」はまあ政権の看板政策にかける意気込みコミでよろしかろうと思うのですが、続く「霞が関における女性人口が一割程度のうちは、…さまざまな配慮をすることができました。/しかし、女性人口が三割になると、…それだけの数のポストがありません」というのはどうなのか。実際には、いわゆる「霞ヶ関」にあたるデータがなかなか見つけられないのですが、人事院の平成25年版年次報告書(http://www.jinji.go.jp/hakusho/h25/1-2-01-1-1.html、ちなみに26年版には該当の資料なし)によれば行政職俸給表(一)適用職員における女性職員の割合は平成24年度で17.0%にとどまっており、I種・総合職採用の過去の女性比率をみても、仮に数年後に採用の女性比率が50%に達したとしても、全体の30%を占めるようになるには相当の期間を要するでしょう。
それはそれとして、内容についても、そりゃテレワークも旧姓使用の便宜もフレックスタイムも大切だろうとは思いますが、しかし霞ヶ関の中の人たちにしてみればあなたがそれを言いますかあなたがという感じではないかと思うのですがそうでもないのかなあ。
というのも、上記女性有志の提言でも明記されているとおり、霞ヶ関の働き方がグダグダになる最大の要因は国会質疑対応であり、その相当部分は質問通告の遅さと、質問内容のあいまいさ(幅広い準備が必要で対応量が増える)、不必要な多さ(持ち時間内で質問しきれない、実際に質問もされない質問が通告される)という国会議員サイドの問題だからです。まあ自民党はきちんとやっているということでしょうし、河野大臣はとりわけきちんとやられていたらしいのですが、しかしまったく一言もないというのはどうなんでしょう。
まああれかな、女性官僚サイドも大臣に慮って話題に上げなかったのかもしれませんが…。とはいえ上記提言資料をみると国会質疑対応に関する提言は全部で10ある提言の最後におかれてはいるのですが、しかし提言15ページ中7ページが国会質疑対応で占められているわけで、やはり大臣なんですからこの問題にも指導力を発揮して取り組んでいく、くらいのことはあってもよさそうな気はします。
なお前回ご紹介した際には書けなかったのですがこの女性官僚の提言には非常に興味深い傾向が見て取れます。まあ不要な公務など存在しない、執行すべき公務はすべて執行するのだという建前からは当然なのかもしれませんが、まずは「勤務時間内 への業務「濃縮」」とか「最大限の効率化による業務量自体の圧縮」を実施し、それでも時間内に収まらない場合は「テレワークを「当たり前に」」と提言しているわけで、仕事を減らせとは言わない、むしろやるべき・やりたい仕事はやらせてくれという提言になっているわけです。まあ考えてみれば当然の話で、キャリア官僚のようなエリート中のエリートであれば大抵の人は相当な仕事中毒でしょうし、いい仕事をたくさんこなしてキャリア形成したいという気持ちも人一倍でしょうから、その道をみずからふさぐような提言にならないのは当たり前かもしれません。
それにしても河野大臣が富士ゼロックスサテライトオフィスの現場責任者を務めたりフレックスタイム制の導入を要望したりしていたとは知りませんでした。であればサテライトオフィスの普及を阻んでいるものがなにか、フレックスタイム制の利点や必要性はどこにあるか、といったことはご承知なのでしょうから、これら分野での規制緩和等にも建設的な貢献をされることを大いに期待したいと思います。