グレードとセグメント

昨日のエントリ(海老原嗣生氏のさりげなく大胆な提案http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20150824#p2)に、hamachan先生から「グレードではなくセグメント」とのトラックバックをいただきました。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-0272.html
このあたり読者の方にはややわかりにくいところがあるかと思いましたので少々敷衍してみますと、労働市場にはさまざまな求人求職があるわけで、新卒就職であってもたとえば高卒なら現業部門が中心とか、それが工業高校であれば大半は製造業か建設業といった具合に対象範囲は限られているわけです。現実には高卒就職は長年にわたって学校推薦・一人一社制がとられてきたことで企業と学校の間に「実績関係」ができあがり、一人一社制がほぼ消滅した現在もなお相当割合の新卒者は実績関係に乗って就職していくという、かなり限定的なセグメントが存在しているわけです。大卒の理系も同様、ながらく大学・研究室推薦による就職が相当割合を占めてきたわけですが、ある時期から自由応募が拡大しはじめ、現在では自由応募のほうが優勢ではないでしょうか。とはいえ有名校・有名企業ほどに大学推薦も多いという話もありますし、自由応募でも大学での専攻に応じたセグメントがあるだろうと思われます。
これに対して大卒の文系というのは、特に職種を限定しない総合職・幹部候補としての採用になるため、もちろん学生さんには希望業種などがあるわけですが、採用側やマーケットに明確なセグメントがあるわけではありません。
それでもまあかつては指定校制やリクルーター制があったり、それがない大学だと学生の側からOB訪問をかけたりするなど、まあ就活の対象となるのはOBがいる企業だ、というくらいのセグメント化はされていたと考えられます。
転機となったのはおそらく1991年にソニーが打ち出した*1大学名不問・オープンエントリー採用だったと思われます。当時抜群の採用力を誇っていたソニーには多くの企業が追随し、きわめて多数の応募を集めました。当時、某人気企業の採用担当者から「資料請求が1万件以上あり送るための切手代だけで数百万円かかる」という嘆き節を聞いた記憶があります。
さらに1996年にリクナビが登場、2000年代に入ると大卒文系の就活のほとんどがリクナビをはじめとする就活サイトを利用するようになりました。ワンクリックでエントリーできる生産性の高さはますますセグメントを融解させていき、海老原氏が書いているような状況に至ったわけです。海老原氏のご提案はこうした実情をふまえたもので、、大手企業の採用時期を3月初〜4月中旬と5月第1週に限定することでセグメント化して効率化をはかろうというものだと考えられるでしょう。
ということで私としてはセグメントをグレードと称したつもりもあまりなく、しかも大学のグレード化はほぼ冗談であって不要という結論ではあるわけですが、それでもなおhamachan先生が反応されたのもなるほどと思ったところで、hamachan先生は大学教育に関して、大学を卒業後の進路に応じでセグメント分けし、教育内容も想定される進路をふまえた職業的レリバンスの高いものといくべきだという持論をお持ちなわけです。そうすれば就職活動も現状に較べればかなり範囲が限られて効率的になるだろうというわけですね。したがって私が書いて消したような「それこそ入試偏差値や過去の実績とかでグレード分け」ではダメであって、教育内容による縦割りのセグメント化でなければならないということになるわけです。
これに関しては私はかねてから書いているとおり企業は新卒を採るとしたら学校が送り出した人材を採用するよりないのであって職業的レリバンスがすばらしいというならそう考える学校がどんどん進めればいいのであり事実本当にすばらしければ企業は喜んで採用するだろうし就職実績があがれば学生さんも集まるだろうという意見です。ただおそらく大手企業の幹部候補としてのリベラルアーツ・コモンセンス系大学教育の需要は引き続きあるでしょうから、結果的に上位有名大学は現状とあまり変わらないという話にはなりそうです。そういう意味では企業の人事管理が変わり、スローキャリアの限定正社員が普及拡大してくれば、職業的レリバンス大学はそこへの人材供給源として有望かもしれません。

*1:実際にはその数年前から子会社のCBSソニー=当時が試行していたそうですが。