経団連出版編『人事の潮流』

経団連出版の讃井暢子さんから、経団連出版編『人事の潮流−人と組織の未来像』をお送りいただきました。ありがとうございます。

人事の潮流―人と組織の未来像

人事の潮流―人と組織の未来像

前半部分は産業雇用安定センターの機関誌「かけはし」の連載記事を、後半は生産性新聞の連載コラムをまとめたものということで、前半は4人の論者がかなり長めに、後半は14人の論者がコンパクトにそれぞれの「人事の潮流」についての所見を述べています。
正直に申し上げてかなり玉石混交ではあり(小池先生の本を読んだあとなので見方が辛くなっている可能性はある)、それでも専門誌紙の連載なので個別に読んでいる分にはひとつの意見としてわかりやすく読めるのでしょうが、こうやって一冊にまとめられたものを一気に読むと相当にアタマが混乱する感は否めません。もちろん、掲載されたメディアを考えれば、素人や初心者ではなく中堅から管理職層が想定されているのでしょうから、批判的に読めるだけの経験を積んだベテランにとってはいろいろと考える材料(事例や海外事情の紹介なども多数あります)も含まれた本としておすすめできるものだと思います。
なお余談ながら、「人事」の潮流であって人事管理の本だから仕方ないのかとも思いますが、この本にはついに一度も「労働組合」という語は登場しませんでした。私が見落としている可能性はありますが少なくとも記憶に残るような登場はしていませんし、「労使」というのも記憶にあるのは1か所だけです。巻末の執筆者17人(守島基博先生は2回登場)の略歴には主要業績も掲載されているのですがそこにも労働組合という語はなし。まあこれは人事管理論の先生方が大半なので仕方ないのかなあ。それにしても、「かけはし」はまだしもとしても、「生産性新聞」がそれでいいのかという気はしなくもない。