大内伸哉『雇用社会の25の疑問[第2版]』

大内伸哉先生から、『雇用社会の25の疑問−労働法再入門』の第2版をご恵投いただきました。ありがとうございます。

雇用社会の25の疑問労働法再入門(第2版)

雇用社会の25の疑問労働法再入門(第2版)

非常に論争的で面白い本ですが、第2版ではかなりの加筆・変更がされているようです。楽しみに勉強したいと思います。
ご参考までに第1版(?)への書評を以下に転載しておきます。


 この本には「労働法再入門」という副題がついている。参考判例も多数掲載されているし、用語解説も豊富だから、労働法の教科書の一種ではあるのだろう。しかし、その内容はなかなかユニークなものだ。

 書名のとおり、この本は25話からなり、それぞれが「疑問」からスタートしている。オビには「会社は美人だけを採用してはダメなのであろうか?」という疑問が大書されているが、ほかにも「夜にキャバクラでアルバイトをしてよいか」とか「女子アナは裏方業務への異動命令に従わなければならないのか」「会社は社員の電子メールをチェックしてよいのか」などなど、働く人にとっては決して他人事ではない、しかしおそらく多くの人には答のわからない「疑問」が次々に登場する。そして、その疑問に対して労働法の立場から解説し、検討し、答を与えていく。それに参考判例と用語解説が加わって、読み進めるうちに案外深いところまで労働法への理解が到達するように書かれている。さらに、「疑問」自体も、徐々に「成果主義賃金は公正か」「定年制は年齢差別か」「どうして過労死するほど働いてしまうのか」「会社は誰のものか」…というように、より本質的で深化したものが提示される。読み進めるうちに、ますます労働法の考え方に対する理解が深まっていくだろう。

 働き方が多様化し、キャリアデザインもまた多様化するこんにちにあっては、この本の「疑問」にあるような問題に遭遇する人も多くなっているだろう。これからの時代、働く人がよりよい職業人生を実現していくためには、こうした労働法に関する知識を持つことは大いに望まれよう。そのためには、単に労働者の権利を解説しただけの学問的(?)知識ではなく、キャリアや仕事のさまざまな場面で、TPOに応じて生かすことのできる実践的な知識でなければならないだろう。その点において、この本はなかなか優れている。労働法の背景となっている日本の労働市場の慣行や、日本企業の人事労務管理の考え方や実態などに対する理解のもとに、現実をふまえた記述となっているからだ。また、こうしたスタイルの本だけに、労働法全体を網羅的にカバーすることは難しいが、「疑問」を巧みに設定・選択されているので、働く人が仕事やキャリアについて考えるうえで求められる知識はほとんど含まれている。ということは、多忙なビジネスパーソンが効率的に知識を吸収できる本だということだ。

 もちろん、法律書だから非常に読みやすいというわけにはいかないが、大方のビジネス書と較べてそれほど読みにくいということもない。キャリアを意識しながら働いている人、あるいはこれから職業キャリアを開始しようとしている学生や新入社員など、幅広い人たちがこの本を手にとって、有益な「労働法再入門」としてほしいと思う。