ビジネスガイド2月号

 (株)日本法令様から、『ビジネスガイド』2月号(通巻898号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

ビジネスガイド 2021年 02 月号 [雑誌]

ビジネスガイド 2021年 02 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2021/01/09
  • メディア: 雑誌
 今号の特集は「非正規社員への待遇差説明義務」で、「最新情報をもとに書式を整理!」となっているように説明用の書式例が3つ提示されていますが、かなり職務分析的で柔軟性やキャリアの観点が欠落していますし、説明も相当詳細にわたっていてかえって紛争の元にならないかと心配になることしきり。さらに言えば、「あなたの仕事は比較対象に較べて大事ではないから処遇も低いです」みたいなことを露骨に書かれるとさすがに就労意欲に差し障るのではないかとも懸念され、このあたりは現場の個別の肌感覚のようなものでうまく適合させていくことが必要だろうなとは思います。
 さらに今号では特別企画として「水町教授が判例から読み解くこれからの同一労働同一賃金」という18ページにわたる記事があり、関係の最高裁5判決をもとに、個別手当の細部にいたるまでていねいに解説されています。さすが当代一流の労働法学者による整理で、わかりやすくまとまっているので多くの読者の参考になると思います(聞き手の森井博子さんの貢献も大きいと推測)。ただまあ水町先生はこれまでの判例が労契法旧20条によるものなので、これからパート有期法8条による事件が出てくればまた異なる判断になる可能性があるというご見解のようで、その差分として例の「同一労働同一賃金ガイドライン」に大いに期待されているようですが、しかしパート有期法8条が労契法旧20条の承継であることは明確なわけですし、ガイドラインも実務上はほとんど使い物にならないわけで、まあ基本的にはパート有期法での事件でも同様な判断となると考えるのが妥当なように思うのですがどんなものなのでしょうか(まあ地裁では面白い判事さんが面白い判決を出す可能性はありますが)。
 なお八代尚宏先生の連載「経済学で考える人事労務社会保障」もこの関係で先月に引き続き手当、今回は家族手当を取り上げておられます。大内伸哉先生のロングラン連載「キーワードからみた労働法」は「テレワークの労働時間管理」で、昨今大きく注目されているテレワークにおける労働時間管理の法政策面からの解説として有意義です。