民主党マニフェスト

今朝出勤途中に聞いていたラジオ放送で政見放送をやっていて、そうか参議院選挙だなあと改めて思ったわけですが、登場した4候補が全員女性かつ有子で、まあそういう時代になったのだなあとそこはかとなく感じました。愛知選挙区は改選数3のところ立候補は7人、うち5人が女性で残りのお一方も有子です。もっとも現時点での情勢では男性2人が当選圏内で、もう1議席民主党みんなの党女性候補が争うという展開のようですが。
さてそういうことで、例によってマニフェストの労働政策をを見ていこうと思います。まずは政権与党に経緯をはらって民主党からですが、一見して前回衆院選のときのものよりずいぶん大括りなものになっています。あまり細々と書き過ぎて自縄自縛になった前回の教訓を生かしたのでしょうか。まあ政権選択選挙ではありませんし、第二院たる参院の意義をふまえれば大きな方向性を示すことのほうがなじむという考え方もあるのでしょうか。まあこのあたりはよくわかりません。
実際、「雇用」にも大項目がひとつあてられてはいるのですが、文章の量はずいぶん少なくなっていて、前振り+4項目となっています。

 現場で働く人たちを応援します。
 高齢者、女性をはじめ働くことを望む全ての人に就業のチャンスがある社会をめざします。
 格差是正ワークライフバランス(仕事と生活の調和)に取り組みます。
●2011年度中に「求職者支援制度」を法制化するとともに、失業により住まいを失った人に対する支援を強化します。
非正規労働者や長期失業者に対して、マンツーマンで就職を支援する体制を整備します。
●高校、大学などの新卒者の就職を支援するため、専門の相談員の配置や採用企業への奨励金支給などの対策を強化します。
●同じ職場で同じ仕事をしている人の待遇を均等・均衡にして、仕事と生活の調和を進めます。
http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2010/data/manifesto2010.pdf、以下同じ

と、これだけでして、派遣とか最賃とかどうなったのだろうと普通思うのではないかと思いますが、あとの方に「民主党政権がこれまで取り組んできたことを報告します。」というのがあって、その【実現したこと】が多数列挙されている中にこんなことも記されているのですね。

 職業訓練の受講を条件に手当を給付する事業をスタートさせ、既に12万人以上の方に職業訓練を提供しています。

 雇用保険の適用基準を緩和することで全ての働く人に対して雇用保険を適用できるようにするとともに、国庫負担を増やして雇用保険の財政基盤を強化しました。

 産業界、労働界および政府は「できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1000円をめざすこと」で合意しました。

 失業後の国民健康保険料について、算定基準を見直し、在職中と同じ保険料水準にしました。

 雇用の不安定化の大きな要因となっている製造業への派遣を原則禁止とするための法案を提出しました。

職業訓練の受講を条件に手当を給付する事業をスタートさせ」ってこれスタートさせたのは自民党政権ですよね。あと、君たち基金訓練の受講者数も前政権から通算してますね(確実なウラをとったわけではないので自信なし)。まあ悪いとはいいませんし、間違いではないように書いているのかもしれません(「実現したこと」であって「実現させたこと」ではないとかね)が、しかし素晴らしく誠実であるとはいえないような。というか、【実現したこと】の最初のほうに「政権交代後から景気は着実に持ち直し、直近では経済成長率が年率 5.0%となるなど力強さを増してきました。」というのがあるのですが、政権交代しなくても景気は回復しただろうと普通思いますよねぇ。景気対策だって(まあ現政権も1月に補正を組んでまたは組替えてはいますが)ほとんどは前政権がやったわけですし。ちょっとやりすぎではないかと思うのですがどんなものなのでしょう。
雇用保険の「全ての人」も100%ではないわけですがまあこれはレトリックとしてあり得るレベルでしょう。最賃もまあ合意はたしかにできたので、もうこれは決定だから公約には改めて書かないのだという理屈も可能でしょう。ただ、派遣については「法案を提出しました」と威張っていますが、与党であれば法案を提出しただけで満足していてはまずいわけで、成立させないうちから実績として誇るのはいかがなものかと。実際選挙結果によっては成立しない可能性もゼロではないわけですし、成立しなくていい法案提出なら野党でもいくらでもできますよね。
さて、公約のほうに戻りまして、前振りの部分はお題目なのでまあそんなもんかという感じ、というか「就業のチャンスがある」と「チャンス」を入れたのはこれまでの民主党と較べれば*1なかなか上出来ではないかという感もあります。まあ「働くことを望む全ての人」が結果的に就労できるというのは無理な注文なので、当たり前といえば当たり前なのですが。「格差是正」もこういう使い方ならまあいいかなと。不適切な格差があることもたぶん事実なので、それは「是正」も必要でしょう。重要なのは方法論であって、法規制などでやると適切な格差まで「是正」されてしまいかねないのでこれは問題だろうと思うわけですが。
具体論のほうも、●の三つめまではまあそうだよねという項目です。これで雇用失業情勢が目に見えて改善するかというとそんなことはないだろうと思いますが、しかしそもそも労働需要を増やさなければ供給サイドやマッチングやセーフティネットを改善しても限度はあるわけなので、そういう前提でこうしているのならそれでいいのだろうと思います。
●の4つめも、衆院選のときのような「均等」の一本足打法でなくなったのは長足の進歩(いやそれが当然なのですが相対的には進歩です)でしょう(パート法8条があるので「均等」を書くことは否定しません)。ただ、「均等・均衡」にすれば「仕事と生活の調和」が進む、というのはやや乱暴なような。まあ、均衡処遇で短時間労働者の処遇が向上すれば短時間労働を選択しやすくなり、仕事と生活の調和が改善するという理屈はわからないではありません。とはいえ、処遇の上げ方としてそれがいいかどうかといえば、あり得なくはないけれど上策ではないように思います。まあこのあたりは考え方や現状に対する評価の違いかもしれませんが。

*1:印象論で、きちんと調べたわけではないので以前からこういう言い方をしていたのかもしれません。だったら御容赦ください。