厚労省分割、頓挫

 厚生労働省の分割構想ですが、あっさり頓挫してしまったようです。

 麻生太郎首相は二十八日、厚生労働省を「社会保障省」と「国民生活省」に分割・再編する自らの構想について「最初からこだわっていない。こだわっているような話をつくられると困る」と表明した。文部科学省の幼稚園部門と厚労省保育所部門を一元化する幼保一元化についてもトーンダウンした。首相官邸で記者団の質問に答えた。閣僚の足並みが乱れ、与党の反発も強いことから取り下げた格好だ。
 首相は十五日の安心社会実現会議で、厚労省の二分割案を披露し、十九日の経済財政諮問会議では「分割という次元の話ではなく、内閣府少子化部門なども含めて全体の枠を考えたい」と指示した。だが、閣僚から反対論が出るなど調整は想定以上に難航した。
 首相は二十八日、厚労省の二分割案を「ああいうところは自由な論議」と弁明。「渡辺さんが最初に言われたセリフだった」と、読売新聞グループ本社渡辺恒雄会長の提案と主張した。この後、官邸を訪れた自民党細田博之幹事長らにも「方針が決まっているわけではない」と述べた。
 当初は分割の具体案を示さないまでも、「閣僚主導にふさわしい規模への分割」などの理念をまとめて骨太方針に盛る予定だったが「分割」表現は削除する。自民党幹部は二十八日「首相は軽い気持ちで検討したらと言った程度。断固たる思いはなかった」と語った。
(平成21年5月29日付日本経済新聞朝刊から)

まあ拙速といえば拙速だったんでしょうか。それにしても、読売新聞は社説でも分割論を展開したというのに、渡辺恒雄氏としてはこの言われ方は心外でしょう。きのうの安心社会実現会議では、委員である薬害肝炎全国原告団代表である山口美智子氏が「衆院選のためのパフォーマンスだとの思惑が広まっていることが残念」と発言し、ナベツネ氏が憤慨するという一幕もあったそうですが、そりゃそうでしょう。この「思惑」ってのは、ナベツネ氏が麻生首相にポイントを稼がせるために厚生労働省分割構想を持ち出した、という陰謀論なんでしょうか?まあ、政治的には明らかに反自民の人らしいので、そう考えたくもなるのかもしれませんが…。
それはそれとして、この構想が頓挫したのは、どうやら厚生労働省を分割するという大元の話ではなく、行政組織を幼保一元化するという話に文科省厚労省とそれぞれの族議員が反発した…というのが最大の理由のようです。だとすると、かなりもったいない話だったような気はします。分割するにせよしないにせよ、その議論を通じて、大臣の負荷の問題や、連合の長谷川さんやhamachan先生が指摘しておられる審議時間の問題などについて、必要な対応に結び付けていくことができたかもしれないからです。各省庁に分散している少子化対策の一本化については小渕担当相も期待を示していた(そりゃ、そのほうが大臣としてははるかに仕事がやりやすいでしょう。いや大臣に限らず。)そうですし、結局何も変わらなかったにしても(そうなった可能性も高そうですが)まったくのムダかといえばそうでもなかったのではないかと思います。それを、幼保一元化という、これまでさんざん議論されてきてなかなか前に進まない(もちろん一定の進展はしていますが)話を取り込んだせいで全体がパーになってしまったというのは、どうも惜しいような気がしてなりません。
まあ、それでも問題提起だけはされたので、分割以外の方法でなんらかの改善がはかられることに期待したいものです。