佐藤博樹先生

年明け早々なにかとバタバタでブログが再開できていませんが、取り急ぎこれだけは上げておきたいので全文引用。今朝の日経新聞に掲載された佐藤博樹先生のインタビュー記事です。コメントはまた書きますが、一部を除きまことに適切な指摘だろうと思います。

 新たな調整のルールを
 東京大学社会科学研究所教授佐藤博樹

 ――雇用情勢が急速に悪化している。
 「昨年十月までは、景気がここまで急速に落ち込むとはどの経営者も予想がつかなかったはずだ。危機感が大きいから、かなりのスピードで雇用調整を進めている」
 「従来は電機業界の景況が悪くても、自動車など他産業が雇用を吸収できた。しかし今回はほとんどすべての業種で景況が悪化しており吸収するのが難しい。この先、雇用情勢がどこまで悪化するかはどの経営者も分からないだろう」
 ――企業はどう対応すべきなのか。
 「雇用維持には企業の存続が前提になる。景気が回復するまで、ある程度は雇用調整せざるを得ないだろう。ただ雇用が維持できなくなったらまず非正規社員を減らし、その後に正社員に手をつけるというような一律的なやり方は見直す時期かもしれない。非正規社員として生計を立てる人が増えるなど、社会の中での位置づけも変わってきているからだ」
 ――具体的にはどうすればよいのか。
 「一つの方法は雇用保障のあり方を多元化することだ。例えば雇用期間を定めず、特定の仕事に従事したり、特定の事業所だけで仕事をする労働契約を企業と働き手が結ぶ。企業はその仕事や事業所がある限り雇用を保障しなければならないが、仕事がなくなれば契約を解除できるというようなルール(契約)を設けるといった考え方だ。景気が落ち込んでも雇用調整をしにくいのであれば、経営者は景気がいいときでも正社員の採用に慎重になる。新たな雇用調整のルールを設けなければ問題は解決しない」
 ――政府の役割は。
 「政府は雇用保険職業訓練などセーフティーネット(安全網)を整備すべきだ。製造業派遣を規制すべきだという意見が一部に出てきたが、それで雇用問題が解決するわけではないし、産業界にも弊害は多い。非正規社員が製造現場で重要な業務を担っている場合もあるし、景気が回復したときには不可欠な人材として必要になるはずだからだ。現在のように非正規社員だからといって正社員より先に安易に削減すれば蓄積した技術が伝承されない懸念もある」
 ――雇用維持策の一つとしてワークシェアリング(仕事の分かち合い)が注目され始めた。
 「ワークシェアは社員の働く時間を減らす代わりに雇用は減らさないということで、時間が減るだけ賃金も減る。ただ、今のように従来百あった仕事が五十に減ったときに仕事を皆で分かち合えるのかという見方もある。中長期的に雇用対策としてより有効なのは技術革新を進めたり、新産業を創出したりすることだ。それには企業だけでなく政府の役割も大きい。有望分野の一つは福祉。働き手として男性の需要もこれまで以上に増えるはずだ」
(平成21年1月8日付日本経済新聞朝刊から)

ああ疲れた(笑)。どうぞコピペしてご利用ください。