経済同友会代表幹事、おおいに?語る

きのうの日経新聞で、1日に首相に呼んでもらえなかった(笑)経済同友会の桜井代表幹事が雇用問題をおおいに?語っています。

 ――首相の賃上げ要求をどう受け止めたか。
 「企業は業績を上げ、売上高を伸ばし、経費を減らして利益を出し、それを投資や株主、社員に分配する。今は景気後退の波が日本に押し寄せ、設備投資にもお金がほとんど回らない。賃金だけ上げるのは非常に難しい。円高を享受する企業も一部にあるが、金融不安がなくなるのは早くても来秋になる。企業が必死になってやるのは賃上げよりも雇用維持だ」
 ――首相は新たな雇用対策作成も指示した。
 「雇用というのは短期の問題ではない。いかに雇用が拡大するかを考えるのが雇用対策で、すなわち有効な経済活性化策を打てるかがカギになる。定額給付金と同様に、足元にとらわれすぎるのはどうかと思う。雇用については政府と企業で役割が違う。政府は中小企業や低所得者層対策をやるとともに、今こそ中長期的な視点で社会保障制度や循環型社会を構築して将来の経済活性化につなげないといけない」
 ――経済界は雇用確保を掲げているが、実際には非正規雇用の削減が猛スピードで進んでいる。
 「問題は大きく、企業も必要以上に削減してはならない。ただ工場が一部止まるなど、やむを得ないケースもある。企業は雇用多様化の一環で非正規を受け入れており、苦しいときは調整するが、景気が上り調子ならば採用を拡大している。学生の内定取り消しについては、よほど厳しい企業だけがやっているのだと思う」
 ――連合も物価上昇率に見合うベースアップを要求した。
 「企業間取引の物価は消費者物価の数倍に上昇しており、企業への圧迫感が強い。最終価格は上げられないが、中間財の仕入れ価格が上がって利益が減っている。連合の要求をすんなり受け入れるのは難しい。なお増益で余力ある大企業については、収益を賃金に回すのが社会的な責務になる」
(平成20年12月3日付日本経済新聞朝刊から)

全体的にはまあそうなのかなという感じですが、「利益を出し、それを投資や株主、社員に分配する。…賃金だけ上げるのは非常に難しい」については、減益にもかかわらず配当を維持する企業もかなり多いらしいので、経済界代表という立場とすればいささか言行不一致の感はあります。組合も政府も、配当を減らして雇用を守れ、ととりあえず主張してみてもいいのではないでしょうか。配当を減らすと株価が下がり、金融問題がさらに悪化しかねないという心配はありますが…。
「いかに雇用が拡大するかを考えるのが雇用対策で、すなわち有効な経済活性化策を打てるかがカギになる」というのもまことに正論と申せましょう。また、「企業も必要以上に削減してはならない」が「やむを得ないケースもある」というのも実感でしょう。「企業は雇用多様化の一環で非正規を受け入れており、苦しいときは調整するが、景気が上り調子ならば採用を拡大している」というのは重要なポイントで、やはり雇用維持というのは正社員が中心、というよりは、正社員というのは実務的には定年までの有期雇用なので、定年退職・有期雇用の雇い止めにかかわらず、結局は約束した雇用期間が終了した人から退職してもらっているというのが実情ではないでしょうか。
なお、最後に「なお増益で余力ある大企業については、収益を賃金に回すのが社会的な責務になる」と取って付けたように付け加えているのがご愛嬌ですが、実際そのとおりですし、経済界としてはこのくらいが精一杯というところでしょうか。