非正規雇用の不安感

きのうの日経新聞に、経済環境が不安定な中での非正社員の意識をきいた調査結果が掲載されていました。調査会社によるインターネット調査ということで、この手の調査が、短期間でそれなりのサンプルサイズで実施できるようになったというのもIT革命の恩恵と申せましょう。

…次の契約更新時に契約が更新されるか「とても不安」「やや不安」と答えたのは計二六%で、「どちらともいえない」(三四%)や「やや安心」「とても安心」(計四〇%)より少ない。だが、一年前に比べて「不安が増している」と答えた人は五人に一人に達し、景気後退が非正社員の先行きに不安を投げかけているのは間違いない。
…ならば正社員になりたいかといえば、そう単純ではない。「なりたい」と答えたのは二六%で、「なりたくない」(四三%)の方が多い。
 正社員になりたい理由は不安定な雇用と低賃金からの脱出が大きい。自由回答欄には「安定が欲しい」「この金額では生活できない」「ボーナスが欲しい」などの声が二十―三十代の若い層に目立つ。
 なりたくない理由は「パートの方が気楽」「家事との両立が難しい」「高齢だから」「正社員はしんどいし面倒くさい」「拘束されたくない」などだ。世代を問わず、こう答える人がいるが、特に子育て中の主婦や男女のシニア層に多い。
 三人に一人を占める“どちらともいえない派”は、収入と安定は欲しいが、自由な時間がなくなるのは嫌と両者の間を揺れ動いている。契約打ち切りへの不安はあっても、家庭の事情や自分のライフスタイルを考えれば簡単には働き方を変えられないようだ。
(平成20年10月20日日本経済新聞朝刊から)

こうした結果をみても、まだ一部にみられる非正規雇用を一律に悪と決めつけたり、すべてを正社員とすべきといった論調が的外れということがわかります。
まず、「20−30代の若い層」で、安定的な職について有用なスキルを獲得・蓄積し、キャリアを発展させることで処遇も向上させていきたいという意欲を持つ人については、それが実現するような政策的支援が必要ということになりましょう。かならずしも正社員にこだわらず(もちろん正社員化も大切ですが)、非正規でもスキルを高めキャリアを伸ばしていけるようにして、それを通じてそれなりに安定的に職が確保されていくようなしくみづくりが重要だろうと思います。
いっぽう、「子育て中の主婦や男女のシニア層」のように、スキルやキャリアへの関心はあまり高くなく、もっぱら補助的な収入を目的に就労している人たちについては、現状のままでもそれほど大きな問題があるわけでもないということになりそうです。もちろん、子育て後にあらためてキャリアを再開したいという人への支援や、シニア層がなるべく長く働き続けることができるための支援といったことが課題になる可能性はありますが。
で「収入と安定は欲しいが、自由な時間がなくなるのは嫌」という「どちらともいえない派」については、なるべく多くを得る努力をする中で、収入と安定をとるのか、自由な時間をとるのか、それぞれに適当なバランスを判断して決めてもらうしかないわけで、それがキャリアデザインというものではないかと思います。もちろん、たとえば育児との両立のように外部経済のあるものについては政策的な支援もあってしかるべきでしょう。